ウーバー配達員「労働者」認定でも現場に残る不安 会社は再審査申し立て、決着まで長期化懸念も

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しかし都労委は、そんなウーバーの主張を認めなかった。

ウーバーは店舗とユーザーによる評価制度によって配達員を評価しており、評価が低ければ、アカウントを停止することもある。さらに配送料を注文者から受け取り、手数料を差し引いて配達員に支払うなど、さまざまなかたちで業務にかかわっている。

また、ウーバーは受けた注文をほぼ100%実現するために、追加報酬(インセンティブ)制度も活用しながら、必要な場所・時間帯に配達員を配置している。こうしたことから、都労委は、配達員がウーバーイーツの「事業の遂行に不可欠な労働力として確保され、事業組織に組み入れられていたというべきである」などとして、今回の命令に至っている。

報酬の算定根拠も明らかにされていない

ユニオンは命令を受けて、11月25日に要求書をウーバー側に提出。事故の際の補償や報酬の算出方法の根拠、配達員への注文リクエスト(配車)のアルゴリズム、アカウント停止の基準などについて、団体交渉で回答を得ようとしている。

ユニオン執行委員で配達員の土屋俊明氏は、「特にアカウント停止の基準の明確化は重視していきたい」と方針を語る。専業の配達員にとってアカウント停止は即、失職につながるからだ。

ウーバーの評価制度は、どの程度の水準になればアカウントが停止されるか、その内容が明らかにされていない。ユニオンに実際に寄せられた相談の中には、振込先の口座の変更で入力ミスをしただけで、アカウント停止になったケースがある。しかも、この件について弁護団が抗議文を送ると、アカウント停止は解除されたという。

報酬体系の明確化も大きな課題だ。従来の基本報酬は、飲食店から料理を受け取ったときの「受取料金」、注文者に料理を受け渡すときの「受渡料金」、配達先までの距離に応じて得られる「距離料金」から、サービス手数料を差し引いたものだった。そこにインセンティブが加算されていた。

配達員が確認できる画面には報酬の内訳が示されているが、その算定根拠は明かされていない(記者撮影)

だが、2021年5月から繁閑差に合わせてウーバー側で金額を変動させる報酬体系となり、基準がわからなくなった。配達員が確認できる画面には、ベース、配達調整金額(通常より交通状況が混雑、需要が高い場合などに加算)、ブースト(注文の多い時間や場所で、基本報酬が1.4倍などに増額される)などが表示されるが、報酬体系の詳細は「アルゴリズムが非常に複雑であることや競争上の理由」(ウーバー)から明かされていない。

実際、配達員に話を聞いてみると、報酬体系に対する不信感は強かった。「同じ1キロを走っても、こちらの注文は安く、こちらは高い。ほぼ同じ時間帯・エリアでそういうことが起こる」(40代配達員)。「報酬は案件によって全然違う。同じ3キロで1000円違うときもある。調整金によるものだけど、その仕組みはわからない」(20代配達員)。

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