「映画で人生が激変」インドの少年に起きた奇跡 映画「エンドロールのつづき」に見る希望の物語

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本作のテーマはもちろん、映画への愛ということも挙げられるが、実はもう1点。教育の大切さも描き出している。サマイが通う学校の先生はこう語る。「現代インドには2つの階級しかない。まずは英語ができる層、そして英語ができない層だ」。

ナリン監督も「現代のインドでは英語が話せなければ高度な教育を受けてキャリアを積むこと、またビジネスをするチャンスは無に等しい。本作ではそのような現代インドの複雑さを描いた」と語るように、ここからはインドになお存在する階級制度や貧困というテーマが浮かび上がる。

だが、だからこそ光を追いかけ続ける少年の姿に勇気や希望、そして時にはほろ苦さをも感じつつ、それでもなお少年の成長、そして未来に思いをはせてしまうような作品となっている。

本作プロデューサーのディール・モーマーヤーは、グジャラート語という地方の言葉で作られた本作は「ボリウッド映画特有の歌や踊りはなしに、一般の人々をキャストに起用して現実的な映画を作ろうという試みだった」と語る。

また、スター映画が多く作られているインドでは独立系の映画に対する支援が充実しているわけではなかったというが、ベルギー(ストレンジャー88)とフランス(オレンジ・スタジオ)の会社からの支援を取り付けることに成功。ナリン監督のビジョンを具現化することを後押ししてくれたという。

子どもたちに「演技キャンプ」を実施

撮影の準備段階では、ラバリを含む、それまで演技をしたことがなかった子どもたちのために、長丁場の撮影に挑むための「演技キャンプ」が行われた。

とはいえ、その目標は「演技力」をたたき込むことではなく、ありのままの個性を保つこと。そこでは即興的な遊びや、感受性のエクササイズ、呼吸法、姿勢などを行い、さらに台本のアドリブなどを行ったという。

そのかいあって、子どもたちの間には信頼関係や友情が芽生え、それが劇中の子どもたちの生き生きした様子に結びついている。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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