「映画で人生が激変」インドの少年に起きた奇跡 映画「エンドロールのつづき」に見る希望の物語

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すっかり映画に魅了され、夢中になったサマイは、別の日に再びギャラクシー座に忍び込むが、今度はチケット代を払えずにつまみ出されてしまう。

だが、たまたまその様子を見かけた映写技師のファザルが、サマイに1つの提案を持ちかける。それは料理上手なサマイの母が作る弁当と引き換えに、映写室から映画を見せてやるということ。

もちろんサマイはその提案に飛びつき、晴れて映画館通いの日々が始まった。映写室の窓からは、アクション、スペクタクル、サスペンスなど、色とりどりの映画が映し出され、サマイを圧倒する。家族に内緒で、浴びるように映画を見続けていた彼は、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが――。

エンドロールのつづき
映写室でサマイは多くのことを学ぶ(写真:ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP )

チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる――。この物語は本作のメガホンをとったパン・ナリン監督の幼少期に体験した実体験がもとになっている。

この映画を作ろうとした理由についてナリン監督は「主人公のサマイは何者かになりたいと願い、夢を抱き始める。私はそんな明るさと無邪気さをたたえる映画をどうしても作りたかった。自然かつ素朴で、時代を問わずに人間本来の生き方を思い出させてくれるような映画を」と明かす。

映画史の巨人たちへの敬愛の念も

さらに「私は自分以上の映画ファンに会ったことがない」と自負するナリン監督。国を問わず、アート映画からジャンル映画まで、ありとあらゆる映画に触れてきたという彼は、自身でも映画クラブを運営。3万5000点以上のDVDやBlu-rayディスクを収集し、さらに200を超える映画祭に参加、もしくは審査員として出席してきたというから筋金入りだ。

そんな彼だからこそ、本作の冒頭で「道を照らしてくれた先陣たちに感謝を」という謝辞とともに、リュミエール兄弟、エドワード・マイブリッジ(※彼は映画監督ではなく連続写真で“動く写真”を設計した写真家)、デヴィッド・リーン、スタンリー・キューブリック、アンドレイ・タルコフスキーなど、映画史にさんぜんと輝く巨人たちへの敬愛の念を示すのは当然のことだった。

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