習氏はゼロコロナ迅速解除のギャンブルに出たか 解除が感染急増招くとの懸念が現実のものに
その後、ゼロコロナ解除が感染急増を招くとの懸念が現実になりつつある。中国各地で集団感染により工場の生産ラインが止まり、人手を確保できない店舗は休業。解熱剤は不足気味で入手困難となっており、病院には長い列ができている。
アナリストの大半はゼロコロナ政策の漸進的な解除を予想していた。習国家主席がなぜ迅速な政策転換といったギャンブルに出たのかは永遠に分からないかもしれないが、この賭けが報われるには、死者数を比較的少なく抑えながら景気を急速に回復させるといった習氏の望む結果の実現が必要なことは明らかだろう。
農村部に広がるにつれ大きなリスクが浮上
政策転換が11月下旬に広がったゼロコロナに対する国民の反発沈静化に寄与しているようには見える。習指導部の退陣を求める声さえ上がり、共産党トップの総書記として異例の3期目入りを10月に果たしたばかりの習主席でさえ何もかもが安泰というわけではないことが露呈した。
ロンドン大学SOAS中国研究所の曽鋭生(スティーブ・ツァン)所長は「コロナ拡散を容認する戦略が整っているとは思えない」と指摘。「保健機関がすでにゼロコロナ政策の持続不可能性を認識していたタイミングで起きた抗議行動に対応し、ゼロコロナを緩和することに習氏が同意したとは思うが、撤回は認めていないだろう」と語る。
これまでのところ感染が集中しているのは、大病院があり医療体制の整った大都市だ。
パンテオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、ダンカン・リグレー氏はオミクロン株が小規模都市や農村部に広がるにつれ「大きなリスク」が浮上すると予想。「恐らく一部地域で症例数を抑制し、医療体制逼迫(ひっぱく)を防ぐため、より広範な制限が再び課されるだろう」と述べる。