来客が6年で4倍!北海道のキャンプ場が復活の訳 氷点下のテント泊もキャンパーの心をつかんだ?

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一面真っ白になった冬のキャンプ場

一方で、冬キャンプは一歩間違うと命の危険もある。誤ったストーブ利用は火災や一酸化炭素中毒の危険があるためだ。ポロシリキャンプ場では就寝前に必ず消火すること、一酸化炭素チェッカーなど対策を講じることを呼び掛けている。また、雪中キャンプイベントを定期開催し、初心者が冬キャンプの注意点を学べる場を提供している。

冬はサイト数を夏の約3分の1に縮小しているが、期間限定でサウナを設置するなどのイベントも功を奏し、2021年冬の利用者は618組と、2018年に比べ約4倍に伸びた。比較的空いている冬を狙う客もいるといい「玄人のイメージが強い冬キャンプですが、ファミリーも少しずつ増え始めて裾野が広がっています」(内山さん)

もう1つ、地味だがキャンパーにとって重要なポイントがある。家族で何度も訪れているという、帯広市の速水優太さんは「水回りがとにかくきれいなので、妻も子どもも気に入っています」と言う。内山さんも「家族連れのリピーターを増やすためには、水回りの清潔さはとても重要」と話す。

ありそうでなかった排水溝ネット

工夫の1つが、炊事場に備え付けられた排水溝ネットだ。キャンプ経験がある人は分かると思うが、排水溝は前の人が洗った皿や鍋の食べ残しで汚れていることが少なくない。「炊事場に排水溝ネットとゴミ袋を置き、使った人が毎回ネットを取り換えることで清潔な状態を保てるようにしました」(内山さん)。筆者はこれまで東北や関東でキャンプをしたことがあるが、都度ネットを変えるキャンプ場は初めてだ。

このほか芝生の手入れや、トイレとシャワー室の清掃もスタッフがこまめに行って清潔さを失わないよう気を配る。シンプルなことだが、こうした積み重ねがファンづくりにつながっている。

2023年再開の陸前高田のキャンプ場も運営

スノーピークが自治体の指定管理者として運営するキャンプ場は、十勝ポロシリを含め大分や高知、大阪など全国に6カ所ある。自治体にとってはスノーピークが持つキャンプ場の運営ノウハウを活用することで、施設利用者数や周辺地域を訪れる観光客の伸長が期待できる。

2023年度には東日本大震災後に営業を停止した、岩手県陸前高田のオートキャンプ場も同社が指定管理者となって再開する計画だ。

キャンプ場運営はスノーピークにとっても自社のテント製品を展示し、利用者に購買を促す絶好の機会になる。同社は47都道府県で自治体や企業などのパートナーを募集し、ビジネス拡大につなげる計画を掲げている。

利用者が少ないキャンプ場が魅力あるものに生まれ変われば、訪れる人が増え、商店や観光施設など地域全体がにぎわう可能性がある。日本のキャンプ市場を活性化させるためのヒントが今回のケースには多く詰まっているのかもしれない。

国分 瑠衣子 ライター

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こくぶん るいこ / Ruiko Kokubun

北海道新聞社、繊維専門紙の記者を経て2019年に独立。社会部、業界紙の経験から経済・法律系メディアで取材、執筆。趣味はおいしい日本酒を探すこと。Twitter:@8kokubun

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