来客が6年で4倍!北海道のキャンプ場が復活の訳 氷点下のテント泊もキャンパーの心をつかんだ?

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このキャンプ場がオープンしたのは20年前の2002年。週末や夏休みは家族連れが利用するが、平日は静かなキャンプ場だった。

転機は2016年。キャンプ用品メーカーのスノーピークと帯広市がアウトドアのコンサルティングなどで連携協定を結んだ。同社がキャンプ場の指定管理者となり、市に代わって2017年度から運営をスタート。「民間のノウハウを生かし、帯広に観光客を呼び込みたいという狙いがありました」(帯広市の担当者)。

実際、帯広市が運営していた2016年と比べ、2022年の利用者数は約4倍に増えた。数年内には黒字化の見通しだ。

想像もしなかった通年営業に転換

民間が入ってキャンプ場の施設が劇的に変わったかというと、実はそうではない。設備は現在もとてもシンプル。シャワー、トイレ、炊事場、スノーピーク製品を販売する管理棟がある程度で、高規格キャンプ場で見かけるような子ども向けのトランポリンなどの遊具や、温泉施設、食材や飲み物の売店はない。

テントを張る区画数は、電源が使える区画を含め58サイト。利用料は電源なしのサイトが1800円、電源付きサイトが3000円で、市が運営していた当時と同じ。

建築家の隈研吾氏が設計した「住箱」というトレーラーハウス

ひとつ目新しいものといえば、建築家の隈研吾氏が設計した「住箱」という名前のトレーラーハウス5棟がある。布団や照明などがそろい、テントを持っていなくてもアウトドアを楽しみたいという人向けだ。

とはいえ、全体としては一般的なテントサイトという中で、いったいどうやって集客しているのか。十勝ポロシリキャンプフィールドの店長、内山勝男さんに聞いてみると、「大きく変えたのが、夏に加え冬期もキャンプ場を開く、通年営業にした点です」と話す。

寒い中でのたき火も格別だ

帯広市の1月の最低平均気温は零下13度と冷え込みが厳しい。積雪もある。帯広市の担当者は「冬にキャンプをするという発想はありませんでした」と振り返る。

長野出身の内山さんも夏を除き、気温が低い北海道のキャンプ場運営に若干の不安を感じていたという。しかし、次第に「これほど寒い世界を体験できるキャンプ場は全国でも少ない。冬キャンプならではの楽しみを伝えたいと思うようになりました」と言う。

冬のキャンプ場は夏とは打って変わり静寂に包まれる。チェックイン後、テントを設営した後は日中からゆっくりと焚火を堪能できる。明るいうちに散策するのもいい。夕方になると冷え込みが厳しくなるのでテントの中へ。

シェルターの中で、温かい料理や熱燗を楽しみながら読書など自分時間を楽しむ。時折、氷点下の外へ出て満天の星を眺める。夏とは違う雰囲気が味わえそうだ。冬のキャンプに自信のない人に向けて、ストーブ付きのトレーラーハウスもある。

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