日本と欧州で出生率がこれだけ違う不都合な真実 令和の時代もひきずる昭和的価値観の呪縛

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1945年に女性の参政権が認められてからすでに77年、1985年に男女雇用機会均等法が制定されてからすでに37年が経ちます。法制度を変えるのも難しいですが、国民の価値観を変えるのはさらに難しいことのようです。

現在、政府は出産育児一時金を42万円から50万円に増額するなど、経済面を中心に少子化対策を進めています。ただ、前出のBさんのように経済的な余裕があっても結婚しないという人が増えている現状からすると、経済対策の効果は限定的でしょう。

経済対策だけでなく、「結婚して子供を持つ」「夫が一家の大黒柱として働き、妻が家庭を支える」という国民の価値観を抜本的に変える必要があります。教育・啓蒙や非摘出子を著しく不利にしている法制度の見直しが急務です。

少子化はもはや処置なし?

では、将来はどうでしょうか。国民の結婚に対する価値観は、変わっていくのでしょうか。政府が価値観の問題にどこまで危機感を持っているのかは不明ですが、政策に関係なく、良い方に向かうかもしれません。

筆者の長女(23歳)を見ていると、彼氏との関係はかなりフラットです。長女の世代では、デートなどで男性が女性におごるという習慣はありません。さらに下の世代だと、男女関係は完全にフラットなようです。

こうしたフラットな男女関係の次世代が婚期を迎えたら、もはやパートナーの学歴なども大した問題ではなくなるかもしれません。そうなれば、非婚化はかなり解消されそうです。

ただ、それによって少子化問題が解決すると考えるのは早計です。結婚しても子供を産まないカップルが増え、既婚女性が産む子供の数が減っています。また、長年続いた少子化によって「少母化」が進み、そもそも子供を産める母親の数が激減しています。

つまり、仮に国民の価値観が変わって非婚化の流れが止まっても、少子化のスピードが少し緩やかになる程度で、子供の数が増えることはないでしょう。こうして考えると、少子化・人口減少は、「もはや処置なし」と覚悟するべき問題なのかもしれません。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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