日本に欠けている「子を虐待した親」支援の仕組み 「子育てをやり直したい」という親も少なくない
虐待したことを否定する親たち
「私は虐待していません」
傷ついた子どもを前に、「私は虐待なんてしていません」と言う親がいます。私も児童相談所で働いていた時に、親御さんがそのように仰る場面に、これまでたびたび遭遇しました。この言葉を聞くたびに、私たちの心は硬くなります。
支援者はこんなふうに思うかもしれません。
「子どもに何をしたんだろう?」
「子どもを傷つけて、反省するどころか、自分の行為すら認めないなんて」
「この人に、子どもへの思いはあるのだろうか」
「本当のことを言ってほしい。でないと支援も始められない」
「私は虐待していません」という言葉は私たちに反感をもたらします。支援する気持ちを削ぐ言葉になります。
児童相談所の役割は、「子どもの心身の安全を守る」ことです。そのために、時に親の意に反しても子どもを一時保護しなければなりません。たとえ、親が、「私は虐待していません」と言ったとしても守るべきは子どもの命です。
児童相談所では、病院や学校、保育所等から虐待の通告を受けて、まずは「子どもの命の安全を最優先して」子どもを保護します。そして、少しでもリスクのない形で親元に子どもを返すように図ります。子どもの命に関わることです。失敗は許されません。子どもの安全が確保される見通しがない中では、とても親元には返せないのです。
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