防衛省の「次期装輪装甲車」決定に見た調達の欠陥 体系的に進められず問題意識なき前例踏襲が続く

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ところが筆者が取材したところ、MAVよりもむしろAMVのほうがより機動力も高く、防御力、とくに耐地雷能力は優れている。実のところ、わが国の装甲車開発能力は南ア、シンガポール、トルコ、UAE、韓国などから比べて、そうとう劣っている。それはこれらの国が輸出に励んで、性能、コスト、品質がこの20年ほどで飛躍的に向上して先進国レベルになったのに、わが国はそのような世界のトレンドに無関心だったし、輸出をしないことに伴って市場経済で性能、コスト、品質が厳しく問われる環境ではなかったからだろうと筆者は見ている。

共通戦術装輪車も次期装輪装甲車も同じ車輌であれば兵站や教育が共用化できるというメリットがあるが2種類の車輌を選定したのでそのメリットを捨てたことになる。仮に両プロジェクトでMAVが採用されれば、兵站や教育が共用されるだけでなく、装甲車メーカーが集約されるというメリットがあった。それを捨ててもAMVが優れており、採用せざるをえなかったのだろう。

ライセンス生産先はパトリア任せ

AMVは国内企業がライセンス生産をすることになっているが、その会社はパトリアが選定することとなっている。常識的に考えればコンペに負けた、三菱重工が選ばれることはないだろう。順当に行けば装甲車製造の経験のある日立製作所が有力候補だが防衛省の発表はなく、パトリア任せであるという。防衛省はすでに来年度予算で次期装輪装甲車29輌分を232億円で要求し、2026年度から配備するとしている。

AMV (写真:防衛省)

AMVを選定した理由として防衛省は基本性能が最も優れており、後方支援・生産基盤についてはMAVと同等とし、総合点でAMVが勝ったと説明している。生産主体が決まりもしないで、いったいどのように後方支援・生産基盤の体制を評価したのだろうか。

防衛省は生産企業が決まらない場合や採用がキャンセルされた場合、また時間と費用を掛けて入札と試験を行うことになると説明している。すでに12月半ばであり、予算が国会を通るのは遅くても4月だ。現在時点でライセンス生産の担当企業が決まっていない、というのは無責任に映る。

次期装輪装甲車のレクチャーでは、その派生型についての説明は筆者の個別質問でようやく出てきた。諸外国では派生型も含めて調達数、調達期間、総予算を明示して議会で承認を得てからメーカーと量産の契約を結ぶ。このような計画なしでは本来調達単価の算出はできないし、納税者に対する説明責任の放棄である。これでは文民統制が機能しているとは言いがたい。

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