「年賀状じまい・マウント」過剰反応する人の盲点 「オンラインの年始挨拶もなし」の風潮が広がる訳

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ただ、過剰な配慮は不要でしょう。その大半は多少の幸せアピールであってもマウントとまでは言えず、むしろ「気をつかわれたくない」「配慮されたほうが傷つく」という人のほうが多い感があります。

たとえば、友人・知人の子ども写真を見たら「かわいい」「大きくなったな」、旅行や購入した家の写真を見たら「楽しそう」「うれしそう」などと感じるのが自然。むしろ配慮して、写真をやめて文字やイラストだけになったら「寂しい」「物足りない」と思う人もいるでしょう。

年賀状じまいというフレーズが世間に知れ渡り、「良好な関係の人だけに出す」という簡略化の流れが進んでいる今、マウントに過剰反応する必要性はないように感じます。

「誰かと比べ妬む」正月の不毛さ

また、「年賀状マウントを気にするのが当然」という世の中になると、相手に合わせて細かくデザインを変えるなどの手間が増えてますます面倒になり、年賀状じまいの流れは進んでいくでしょう。

もし自分に届いた年賀状を見て「マウントを取られている」と感じたら、「その人とは少し距離を取ればいい」というだけの話。ただ悪気がないケースも多く、「今わかり合えない」というだけで、これからの人生で共感し合える関係性になるかもしれないので、感情的に絶縁しないほうがよさそうです。

テレビもネットメディアも、この時期になると年末らしいテーマを扱いたがる傾向があり、その意味で「年賀状マウント」は打ってつけのネタ。それらの番組や記事を見た人々がSNSに書き込むことで、このフレーズは拡散され続けています。

ただ、そもそも自分と誰かの幸せを比べること自体が不毛ですし、正月くらい幸せ自慢できる世の中であってもいいような気もします。「正月から誰かの幸せを妬む人が多い」という悲しい世の中にならないためには、みんなで配慮するよりも、年賀状マウントそのものを気にしないほうがいいのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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