カーブ路線高速化の立役者「振り子車両」名車列伝 381系から海外まで、車体を傾けて走る列車たち
振り子式車両は、海外ではイタリア、イギリスが先陣を切った。イギリスの高速列車の草分けであるAPT(Advanced Passenger Train)は、同国鉄が1970年代初頭に開発したガスタービン駆動の車体傾斜式列車で、1976年まで各種試験が行われた。その後、1978年には第2段階としてガスタービン式ではなく電車の370形「APT-P」が登場した。
APT-Pは1981年よりロンドン―グラスゴー間のインターシティー(特急)として試験的に暫定営業運転を開始したが、途中で緊急停止してそのまま運転を打ち切った。結局APT-Pは1985年12月に突然運転休止を表明し、1986年に計画自体が破棄されてしまった。
一方、大きな成功を収めたのがイタリアの「ペンドリーノ」だ。これはイタリアの高速列車のうち車体傾斜式列車を指す通称で、振り子の意味がある。イタリアは山がちな国土で鉄道もカーブが多く、古くから車体傾斜制御の開発に力を入れていた。イギリスのAPT・370形の技術も導入し、1975年には営業運転可能な初の車両としてETR401形電車が試作的に製造された。
大成功を収めた「ペンドリーノ」
ペンドリーノは「強制車体傾斜式」で、センサー類で曲線進入を検知して油圧シリンダーで強制的に車体を傾ける。一般的に傾斜の角度は日本の振り子式よりも大きく、JR四国の2000系が5度なのに対してペンドリーノは8~10度である。
本格的量産車のETR450形は1988年にデビューし、真っ赤な流線形車体が話題になった。筆者も登場後、すぐにローマからミラノまで高速新線経由で同乗取材を行ったが、本格的に振り子機能を発揮するのは高速新線が未開通だったフィレンツェ―ミラノ間の山岳区間であった。
この電車の成功によりペンドリーノは発展を遂げ、イタリア国内の特急はもとより1996年にはアルプス越えの国際列車「チザルピーノ」にも導入。スイス・ドイツへ乗り入れ、山岳路線で振り子機能を発揮して活躍した。在来線で高速運転できるペンドリーノはドイツやスイス、スペイン、チェコ、フィンランド、イギリスなど各国で採用され、高速化に大きく貢献している。
これらのほかにも、特殊な構造による自然振り子式を採用したスペインのタルゴ・ペンデュラー(客車)などさまざまな車体傾斜式車両がある。いずれにせよ、カーブの多い山岳路線のスピードアップに威力を発揮するシステムであり、日本の在来線に合致した機能といえよう。日本や世界各国の鉄道高速化において、車体傾斜式の列車には今後も大いに期待したいところである。
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