カーブ路線高速化の立役者「振り子車両」名車列伝 381系から海外まで、車体を傾けて走る列車たち

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紀勢本線の381系は2015年10月30日をもって運転を終了したが、一方の「やくも」は前述の通り定期運用を行う唯一の国鉄特急型電車としてまだまだ軽快な走りを続けている。しかし、JR西日本は2024年春以降、新型振り子式車両の273系を営業投入する予定と発表しており、381系が姿を消す日はいよいよ近づいてきている。

80系と381系
デビュー当時の381系「しなの」。名古屋駅で80系電車と並ぶ(撮影:南正時)

国鉄時代は381系のみだった振り子式車両は、JR発足後に各社がスピードアップのため相次いで投入した。

先陣を切ったのはJR四国の特急型気動車2000系だ。気動車としては日本初のみならず「世界初」の振り子式車両で、「制御付き自然振り子式」も日本で初めて採用した。これはカーブなどの情報を記録した装置を車両に搭載し、地上側の位置情報などと照合してスムーズに車体傾斜・復元を行うシステムで、381系の「自然振り子式」で発生していた傾斜の遅れやカーブを抜けた後の「揺り戻し」などを解消し、乗り心地を向上させた。

四国は電車も振り子車を導入

2000系の試作車は1988年に登場し、TSE(Trans Shikoku Experimental=四国横断実験列車)の愛称で各種試験を実施。1990年からは量産車が登場し、四国各地を結ぶ特急列車としてその高速性能を発揮し、現在も活躍を続けている。1992年には、翌年の予讃線全線電化に先駆け、流線形の制御付き自然振り子式特急電車8000系が岡山・高松―新居浜間でデビューした。

JR四国2000系「TSE」
JR四国の2000系気動車試作車「TSE」(左)と新型の車体傾斜式電車8600系(撮影:南正時)

JR四国はその後、2000系の置き換えを目的として振り子式より低コストな「空気ばね式車体傾斜」を採用した2600系気動車を2017年に導入した。これはカーブを通過する際、車体を支える空気ばねの高さを調整して車体を傾けるシステムで、新幹線N700などにも使われている。だが、カーブの多い土讃線では空気ばねの高さを調整するための空気容量確保に問題があり、2000系の後継車は制御付き自然振り子式の2700系が量産されることになった。

2700系は2019年8月から高徳線の特急「うずしお」の一部で運用を開始し、現在はアンパンマン列車仕様も走る。一方、電車については空気ばね式車体傾斜の8600系が2014年から導入されている。これらの新世代車両の登場により、2000系気動車は次第に姿を消す運命にある。

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