実際のところ、SNSやブログなどのアカウントに紐付いで存在しているインターネット上の持ち物は砂上の楼閣に保管されていることが多い。運営元の方針、あるいは事業撤退ですべてが無に帰すことがある。
無料ホームページサービス「Yahoo!ジオシティーズ」は2018年10月時点で約400万件のサイトを保有していたが、2019年3月に終了して今は存在しない。2000年代後半に10代や20代の間で流行った「前略プロフィール」も2016年9月に姿を消した。「Yahoo!ブログ」も「ヤプログ!」も「@homepage」もなくなった。
ITサービスにおいて世界規模の影響力を持つEU一般データ保護規則(GDPR)は、第20条でデータポータビリティ権を規定している。自分のデータをサービス提供側に縛られることなく、自分で自由に持ち歩ける権利だ。Web3の思想にも通じるところがあり、方々で積極的な取り組みが見られる。
故人のアカウントを託された人にできること
ただ、Web2.0時代から親しまれてきたサービスでこの権利が威力を発揮するにはまだ時間がかかりそうだ。ましてや、直接的に金銭に絡まない故人のアカウントの保護は優先されない。
インターネットは場所も時間も選ばずに誰でもメッセージが残せるという、有史でも類を見ない空間だ。ただし、亡くなった人は本人が主体的に動けない。その空間は生きた人がこまめに動かないと成り立たない。
今動けない人の「声」はとても儚い。そこにはかけがえのない価値が内包されていることも少なくない。その声を守っていくのは今動ける人しかいないだろう。
マスク氏のツイートに戻って考える。誰にもアカウントを託さず、あるいは託せずにこの世を去った人のTwitter上での記録は消えてなくなってしまうかもしれない。
一方で、家族や友人・知人など大切な故人のTwitterアカウントを託された人で、そのアカウントにログインできるのに、しばらく放置していて休眠状態になっている可能性があるのであれば、何もつぶやかずともログインだけはしておいたほうがいいだろう。IDとパスワードが判明しているなら、バックアップも取っておいたほうがいいかもしれない。
生きている人々が動ける範囲でやれることはある。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら