選挙の結果でひっくり返る「台湾の交通政策」 与党が大敗「統一地方選」ではどんな影響が?

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桃園MRT
台北と近郊の桃園市を結ぶ桃園MRT(写真:Jasmin Wang/PIXTA)
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「九合一選挙」と呼ばれる台湾の統一地方選が11月26日に行われ、与党の民進党が大敗する結果となった。六都と呼ばれる主要都市の投票率は7割ほどと国政選挙には及ばなかったものの、街中にはポスターがあふれ、候補者がマスクや消毒液などを民衆に配りながら市場や駅前をねり歩く熱烈な選挙戦が繰り広げられ、国民の政治への関心の高さがうかがえた。

その関心は交通政策にも向いており、例年各地で高速鉄道の延伸や鉄道建設計画が持ち出される。選挙戦が終了すると進度が見られなくなる机上の空論も多い一方、台北を中心に実際に進展するケースも少なくない。

公共交通の整備状況や利用率は、台北など北部が南部を大きく上回る。日本の国土交通省にあたる交通部が発表している公共交通の利用率は、台北市が38.2%の一方、南部の主要都市である高雄市は6.3%と大差がある。整備についても、北部全体で都市鉄道(MRT)は7線が着工済み、または行政院(内閣)の審査を通過し着工の見込みが立っているのに対し、南部はその半分に留まっている。

今回の選挙における北部でのそれぞれの政党や候補者が掲げた交通政策を振り返ってみよう。

民進党は「交通費軽減」で若者にPR

北部ではもともと野党の国民党が強い傾向にある中、これまで基隆市と桃園市、新竹市の市政を担ってきた民進党は、台北市長候補に政府の衛生福利部でコロナ対策を指揮してきた陳時中氏、衛星都市である新北市長候補には台中市長や交通部長を務めた林佳龍氏を擁立。「北北基桃」(台北・新北・基隆・桃園)と呼ばれる北部4都の候補者が連携した公約を掲げた。

その目玉が、1280元で台北市・新北市のMRT・路線バスが1カ月乗り放題、かつシェアサイクルの基本料金が無料のパス「1280月票」の拡充である。公約はこの価格を1200元に値下げし、さらに範囲を4都市全域に広げ、交通手段も台湾鉄道、桃園MRT、客運(高速バス)を追加するという大盤振る舞いの内容で、交通費の負担軽減を掲げて民進党の支持層である若者世代の支持を狙った。

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