選挙の結果でひっくり返る「台湾の交通政策」 与党が大敗「統一地方選」ではどんな影響が?

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LRTは高規格のMRTなどと比べてコストが低く、建設期間も短く済むためもともと整備が比較的容易ではある。だが、延期が繰り返されることが多い台湾の鉄道建設で予定通りの開業見通しが立てられたこと、さらに2023年にはメトロブルーラインの延長線にあたる三鶯線も開業を予定しており、これらの鉄道整備が着実に進むことは国民党・侯友宜市政に追い風となるであろう。

台湾の交通政策は選挙でひっくり返ることが多い。民進党が多くの市長の座を獲得した2014年の統一地方選では、高架線での事業化が決まり、一部で準備工事も進んでいた桃園市の台湾鉄道立体交差化事業が地下化に変更され、今年ようやく着工した。台中市でも2014年に開業したばかりのBRT(バス高速輸送システム)が2016年に廃止に追い込まれるなど、市長・政党の交代によって大きく左右される例が目立つ。

今年の選挙戦でもさっそく、同様の傾向が見て取れる。民進党の候補者が掲げた「1280月票」の拡充は、新北市交通局の鐘嗚時氏がシステムの整備に時間がかかるとしてはねのけ、早くも暗礁に乗り上げている。

交通政策は市民本位の視点で

また、台北市長選で当選した蒋介石のひ孫にあたる国民党の蔣萬安氏が、シェアサイクルの基本料金30分間無料化の復活を検討していると報じられた。

台北のシェアサイクルの基本料金は、現市長の柯文哲氏によって2015年に有料化された。これは駅やバス停などから目的地までの、いわゆる「ラスト1マイル」でシェアサイクルを必要とする人々に確実に自転車を貸し出しできるようにすること、自転車専用道路を整備することが目的で、民衆に好意的に受け入れられた。再度の無料化検討がどのような反応を招くか注目される。

一方、先述の新北市捷運工程局と市長選候補だった林佳龍氏の間で起きた論争は、行政機関がプロパガンダ的な発信を続けたことに一部の議員から中立性を疑問視する声も上がっている。政党に左右される政策に落胆する市民も多い中、台湾の交通網の発展にはうわべの政治的な観点でなく、市民本位の視点が必要だろう。

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小井関 遼太郎 東アジアライター

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こいぜき りょうたろう / Ryotaro Koizeki

台湾北部在住。観光や都市政策を中心に研究を進めている他、台湾のガイド資格などを保有しており現地事情に精通。台湾から見た東アジア情勢を中心に発信している。
E-mail : ryo120106@gmail.com
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