選挙の結果でひっくり返る「台湾の交通政策」 与党が大敗「統一地方選」ではどんな影響が?

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台北市では2019年に、台北MRTレッドライン淡水線の末端部の2次交通となる「淡海LRT」、2020年には台北近郊の円状のネットワークを形成する中規格の環状線が部分開業した。現在、新北市では中規格の「三鶯線」「萬大樹林線」や山間の住宅地をつなぐ「安坑LRT」、桃園市では市内を東西に走る「グリーンライン」など4つの本線と3つの延伸区間で工事が進んでいる。

淡海LRT
2018年に開業した淡海LRT(写真:周芷筠提供)

新北市長選では、同市で事業化調査が進行中の「五泰LRT」と「泰板LRT」が大きな争点となった。民進党の候補者、林佳龍氏はこの2路線を統合のうえ延伸し、LRTではなく中規格路線とする「溪北捷運」計画を掲げた。台北市への通勤需要のみでなく、新北の副都心をつなぐことで新北市単体での発展を目指すべきという主張である。

この構想に対し、新北市の鉄道建設を担う捷運工程局は選挙戦が近づいた7月から、林氏の構想を否定するニュースリリースを相次いで発表し、「選挙のための絵に描いた餅」であるなどと批判した。行政機関が発言するべき内容でないと林氏の選挙対策本部が反応すると、捷運工程局側は「間違った事実を伝えなければそのような発信はしない」などと表明し、議論は泥沼化した。

新北市長は選挙翌日にLRT視察

前述の通り、民進党は北部の選挙戦で政策連携などを図り、年末に一部が開業予定であった桃園MRTの延伸区間には選挙直前の11月22日に蔡英文総統が視察に訪れるなど、国政でのアピールもあった。だが、同時に市当局は信号システムの統合の遅れを理由に2023年7月への延期を発表するなど慌ただしい対応が見られた。

結果として、民進党は桃園市長選に出馬を予定していた林智堅氏の論文盗用疑惑、衛生福利部でのコロナ対策で当初は支持を集めていた台北市長候補・陳時中氏の感染爆発後の対応に批判が集まるなどの要因が影響し、桃園市、基隆市の市長の座を国民党に譲り、北部4都市では全敗となった。

一方、新北市長選で再選した国民党の侯友宜氏は、選挙の翌日から年末のプレ開業に向けて最終点検や試運転が繰り返される安坑LRTを訪れ、「選挙戦は半月であるが、4年間(任期)の承諾を守り開業にこぎつけなければならない」と発言。当選後は街を回って投票者に感謝する「謝票」といった行事に力を入れる政治家が多い中で、市長の仕事に専念している姿を見せた。

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