高価格帯シャンプー下克上、焦る花王の次の一手 新興ブランドが続々登場、シェアを拡大中

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それが「ボタニスト」の誕生によって一転、シャンプーは利益率の高い商材に変化したわけだ。こうした事情で「ボタニスト」のドラッグストアへの配荷は急激に拡大していった。

シャンプーの高価格化は年々進んでおり、市場調査会社であるインテージによると、ドラッグストアなどでのシャンプーの平均単価は2017年から2021年の間に約11%上昇。

リピート率を表す詰め替え用を見ても、「ボタニスト」を含む1L当たり2500円以上のカテゴリの売り上げ構成比は、2021年時点で25%を超え、4年間で約2倍に拡大している(「ボタニスト」の価格はボタニスト公式ECサイト参照)。

もう1つの理由は、ブランドコンセプトの設定やパッケージづくりといった商品開発力の強さだ。

レッドオーシャンのヘアケア市場で売り上げを伸ばすには、店頭での見え方も重要だ。「ボタニスト」は透明な容器に手書きのロゴという他社製品よりもシンプルなパッケージを目指した。ドラッグストアのヘアケアの棚で透明な容器は少なく、売り場で目を引くように作られている。I-neの藤岡氏は「情緒面の価値などアートの部分も非常に意識している」と語る。

新規ブランド「YOLU」の成長もI-neの企業別シェアに大きく貢献した。I-neが「第2のボタニスト」を目指して開発した「YOLU」は、2021年の発売から約1年間で売上本数が1000万本に達し、発売当初の「ボタニスト」を超える勢いをみせている。

I-neは「YOLU」の商品開発にあたり、AIを利用した独自の需要予測などに基づき、今後流行する可能性の高いテーマを探った。残ったアイデアの中から、既存商品と被らないコンセプトを選び出し、「ナイトケア」という睡眠時の髪の補修をアピールする商品を完成させたというわけだ。

続々と現れるコスメカンパニーの新興企業群

「ボタニスト」が1500円程度の高価格帯カテゴリを切り開いたことで、新興企業が続々と参入し始めている。高価格帯シャンプーが店頭でも売れるとわかった今、後発企業はI-neのようにECから攻略する必要はなく、ドラッグストアへ直接アプローチが可能だ。

これらの新興企業はI-neと同様、自社で工場を持たず、商品の製造はOEM(受託生産を行う企業)に委託している。これにより、新興企業は自社の強みである商品開発に特化することができる。OEMが持つヘアケア関連の製造技術が充実しているため、新興企業でも高品質なシャンプーを販売できるのだという(業界関係者)。

中でも勢いがあるのは、コスメカンパニー傘下のヴィークレアとステラシードだ。

ヴィークレアの手掛ける「アンドハニー」シリーズは、口コミサイト「アットコスメ」のシャンプーカテゴリで2年連続ナンバーワンを勝ち取った。2022年も上半期時点で同じく1位と、高評価が続く。

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