マスク氏買収のツイッターを欧州が超警戒する訳 来年5月からビッグテックに「DMA」が適用

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DMAは2022年11月1日に発効され、2023年5月2日に適用される。ゲートキーパーとして認定された企業が規則に違反した場合、企業は世界における売上高の最大6%の罰金を科される。

EUは、世界で影響力を拡大してきたビッグテックに対して広範な規制を課すことでEU市場での独占的運用をブロックし、公正な競争を促し、公正さとコンテンツに責任を負い、社会にダメージを与えるフェイクニュースや情報操作を阻止するための監視を強める方針だ。

EUから離脱したイギリスもオンライン安全法案を議会で審議中だ。BBCはオンラインで自殺や自傷行為のコンテンツを見た後に命を絶った10代のモリー・ラッセルさんの例などを紹介している。法案審議が熱を帯び、とくに最近、大規模なネットプラットフォームから「合法的だが有害なコンテンツ」を削除する措置が法案から除外されたことで、ラッセルさんの父親を含む被害者の親が激怒している。

SNSが拡散してきた有害サイトは、未成年者を死に追いやる決定的悪影響をもたらすことをはじめ、世論を間違った方向に動かし民主主義に決定的ダメージを与える内容まで広範に及ぶ。

民主主義の根幹を揺るがす事態

アメリカのフェイスブック(FB)の個人情報大量流出問題で、FBのサイトに情報の不正取得を組み込んだアプリを掲載したことが疑われたイギリスの政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカ(CA)は2018年、顧客を失い倒産した。

この問題で、FB側は個人情報を不正取得された被害者が全世界で8700万人以上にのぼることを認め、マーク・ザッカバーグCEOが議会証言で再発防止に取り組むと約束した。

その一方で、ザッカーバーグ氏は自分が立ち上げたFBが大規模な世論操作や政治介入につながることは想定しなかったと述べ、GAFAMの一角をなすFB創業者の問題意識の低い稚拙さが問題視された。

情報の不正入手を疑われたCAは、2016年のアメリカ大統領選でトランプ陣営に有利となる情報を選挙運動に利用したほか、イギリスのブレグジットの国民投票へもFBを通じて影響を与えたことが問題視された。

またSNSは、ロシアが重視する国の国政選挙への介入や、トランプ氏がけしかけたとする昨年1月のアメリカ大統領選後のトランプ支持者の連邦議会議事堂乱入事件にも大きな役割を果たした。

このことはヨーロッパでも民主主義の根幹を揺るがす深刻事態と受け止められ、EUがGAFAMの規制を強化する根拠の1つとなっている。

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