「年上部下」との軋轢を和らげる3つのステップ 日本一のホストは究極のプレイングマネジャー

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STEP② プライドと承認欲求を満たす

聖夜さんという34歳のホストがいます。ホスト歴10年以上で、冬月グループ内で最古参です。彼は今風とは程遠く、会社勤めの人事部にいそうな落ち着いた雰囲気をまとっています。ホストの世界は、破天荒な人生を送ってきた人や、世の中的にはダメな烙印を押されそうな人のほうがお客様からの受けがよく、聖夜さんのようないい人すぎる常識人はあまり目立つことができないと言われています。

いてほしい人に新たな役割や仕事を任せる

それを証明するかのように、彼の月の売り上げは決して高くありません。いまだに10代・20代の後輩ホストたちと一緒に寮生活を送っています。後から入ってくる若いホストに追い越され、彼はつねに年下上司から指示を受けながら仕事をこなしています。

しかし、ほかの代表も、幹部も、誰一人として彼を不要とは思っていません。むしろ、居てほしいと望んでいます。僕も同じ気持ちです。彼にだってホストとしていろいろな思いはあるでしょうが、それでも周りを立てようとする節度と分別を持ち合わせているし、後輩の面倒見もいいからです。10年以上もホストを続けていれば悪口の1つでも聞こえてきそうですが、彼のクレームは一度も聞いたことがありません。

だから僕は、聖夜さんのためにヘッドマネジャーという肩書を新たに作り、少し手当を乗せています。また、ホストは売り上げによってランク付けされ、それぞれのランクに応じた仕事があります。ただ彼には、僕や幹部の小用をお願いするようにしています。そのほかにも、解雇せざるをえなかったホストとの面談の日程を人事部と調整する仕事や、寮長を任せるなど、同じクラスのホストには任せない仕事も頼んでいます。

聖夜さんは、仕事に対して文句を言うホストでは決してありません。自分の立場を受け入れて仕事をこなす、まさに年上部下の鏡のような人です。それでも僕は彼を観ていると、年上としてのプライドを持ちながら仕事に向き合っているように感じます。新しいポジションを作って、同じランクの人たちには任せない仕事を振ることで、年上としての責任感や自尊心を満たすようにしています。

年上部下の多くは、承認欲求が満たされずに、そのはけ口として仕事の愚痴をこぼしています。役職を上げることはできなくても、僕が聖夜さんにしたように、新しい仕事を振って責任感や自尊心を満たしてあげるだけで、案外簡単に不平不満は収まります。

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