彼らが再び交際を始めた経緯を述べる前に、自他ともに認めるのんびり屋の謙介さんの話を聞こう。謙介さん、53年間も1人で何をしていたんですか?
「僕に対しては質問の口調が厳しいですね(笑)。何をしていたのかと言われたら、ホッケーと仕事だとしか言いようがありません。誰かと一緒に住むことには抵抗はありませんが、一夫一妻制の結婚制度は近代資本主義の産物だと思うので、それに従う必要はないと思っていました」
1歳上の姉の出産で心が動いた
インテリ自由人な謙介さん。結婚に積極的でなかったのはもう少し切実な理由がある。謙介さんの父方の家系には遺伝的な疾患があり、謙介さん自身も手術をして、ある程度は回復したという状況なのだ。だから、結婚して子どもを作ることにためらいがあった。
しかし、40歳を過ぎたころ、その足かせから自由になる出来事が起きた。1歳年上の姉が男の子を出産。その子には遺伝的な疾患がないことがわかった。
「そういうこともあるのか、と驚いて、急に子どもが欲しくなりました。その頃には自分が40代前半になっていたので、子どもができる確率を上げるには相手に若さを求めるしかありません。マッチングアプリなどを使って30代前半の女性と会ってお付き合いもしましたが、結婚には至りませんでした。フィーリングが合わなかったのだと思います」
謙介さんの「敗因」はフィーリングではないと筆者は思う。朗らかなのにこだわりが強く、しかもそのこだわりを人には押しつけない。連絡もまめではない。爽やかだけどつかみどころがない印象を相手に与えやすいのだ。
謙介さんの結婚相手選びの条件は、「やせ型で歯並びがよく、クレバーで、何かに頑張っている人」だ。ちなみに、その「頑張り」は謙介さんなりの基準をクリアしなければならない。学生時代からプロ選手として競技に打ち込み、全国大会での入賞経験もある奈津さんはたまたまピッタリの女性だったのだ。
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