今年に入り投資家がインフレ上昇と米利上げを見込んだ投資を拡大していた時期、ドルの勢いは止められないように思われた。ところが今や一挙に流れが逆転しつつある。
インフレが落ち着きつつあることを受け、市場では米金融当局によるさらなる引き締めの観測が後退。JPモルガン・アセット・マネジメント(AM)やモルガン・スタンレーなどのかつての強気派は、ドル高の時代が終わりつつあるとの見方を示した。それが欧州や日本、新興国通貨の買いの好機につながる可能性がある。
JPモルガンAMのメルボルン在勤ストラテジスト、ケリー・クレイグ氏は「市場は今や米金融当局の軌道をより明確に把握しており、もはやドルは今年これまでのように買われる一方ではない。ユーロや円などの通貨が回復する余地がある」と語った。
米金融当局者のよりハト派的な発言とインフレ鈍化を受けて利上げペース減速の観測が高まる中、世界の準備通貨であるドルの最良の取引方法を巡る議論が活発化しているが、多くの人が似たような結論に至った。それは米国例外主義が後退しつつあるということだ。
ドルの下降局面が長期化すれば、影響は為替市場だけにとどまらない。輸入インフレがもたらした欧州経済への圧力が和らぐほか、貧困国にとっては食料購入価格が下がり、ドル建てで借り入れている国の債務返済負担が少なくなる。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は9月の高値から6%余り下落。ドルはこの1カ月、全てのG10通貨に対して値下がりし、対円と対ニュージーランド・ドルで約7%下げている。
Abrdn(アバディーン)の投資ディレクター、ジェームズ・アシー氏は「米インフレは落ち着く兆しを見せており、米連邦準備制度は利上げが物価上昇に及ぼす遅延効果を認識している」と指摘。日米の金融政策の違いに触れ、「乖離(かいり)は限度に達したと考えている」と説明した。
同社は1カ月ほど前にドルのポジションを「オーバーウエート」から「中立」にシフト。ドルが円やポンドに対して下落すると予想している。
モルガン・スタンレーのアンドルー・シーツ氏らアナリストはドルが10-12月(第4四半期)にピークに達し、2023年を通して下落し、新興国市場の資産を支えると予想。フランクリン・テンプルトンの債券担当最高投資責任者(CIO)、ソナル・デサイ氏は円や韓国ウォンなど「極度の圧力下に置かれてきた」通貨を買う良いタイミングだとの見方を示した。
原題:Wall Street Rips Up Dollar Playbook as 2022’s Top Bet Crumbles(抜粋)
--取材協力:.
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著者:Ruth Carson
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