米国の株価を大きく下落させる「2つのリスク」 市場のソフトランディング予想は楽観的すぎる

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アメリカの株式市場はインフレ指標が落ち着きひと一息ついているが、今後も楽観的に見ていいのだろうか(写真:ブルームバーグ)

11月の株式市場の大きなヤマ場は、10日に発表された10月のアメリカ消費者物価指数(CPI)だった。

前月比で0.4%、前年比で7.8%の上昇と、予想を下回る弱い伸びにとどまった。NY(ニューヨーク)株式市場はこれを好感する形で大きく買いが先行。NYダウ工業株30種平均は前日比1201ドルの上昇となるなど、過去2年間で最大の上昇を記録した。

ワイオミング州ジャクソンホールのシンポジウムにおける講演で、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がインフレを抑制するために積極的な利上げを行う方針を示したのは8月26日のことだ。パウエル議長が「インフレ抑制のためにはある程度の景気の減速はやむをえない」との見方を示して以降、市場は売り一色の展開が続いていた。

インフレに対する警戒感が極端にまで高まる中で発表されたCPIの数字が下振れたことを受け、「これでインフレ関連の悪材料はすべて出尽くした」との見方が強まったことが、株価急伸の背景となったのは間違いない。

今後の経済指標の発表スケジュールを見ると、12月2日に発表される11月の雇用統計も、こうした市場の楽観的な見方を打ち消すようなデータが出てくる可能性は低い。クリスマス・ラリーと呼ばれる季節的な上昇に対する期待も後押しするとなれば、状況次第では12月13~14日に開かれる今年最後のFOMC(連邦公開市場委員会)まで、上昇基調が維持される可能性もある。

景気後退に陥るリスクには十分な注意が必要

では、株式市場はこのまま当面の底値をつけ、本格的な上昇トレンドへと転じるのだろうか。その答えは結局今後のデータ次第であり、現時点ではイエスともノーとも言い切れない。インフレが今の水準以上に悪化することがなく、FRBの政策金利の引き上げも5%に達せずに打ち止めとなるのであれば、これ以上大きく株価が下落しないことも十分にありうる。

だが現実問題としてその可能性はかなり低いと言わざるをえない。市場はこれから起こりうる2つのリスクシナリオを、まだ十分に織り込んではいないからだ。その2つとは「景気がさらに悪化して深刻なリセッションに陥るリスク」と、「インフレが現在の水準から一段と進んでしまう、あるいは高止まりし続けるリスク」だ。

このうち、前者の景気後退のリスクに関しては、多くのアナリストがその可能性を指摘しており、想像すらしていないサプライズというわけではない。常に楽観的なバイアスのかかっている株式市場が、あえて懸念材料視していない部分も大きいと考えられる。

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