日経平均上昇でも12月中旬には利確を勧めるワケ 目先は最大2万9000円台の回復も視野に入った
加えて、11月14日のインドネシア・バリ島での米中首脳会談は大きかった。両国の首脳の対面開催は実に3年5カ月ぶりのことで、しかも会談は約3時間もの長時間に及んだ。
冒頭、ジョー・バイデン大統領は台湾情勢などを念頭に「違いを管理し、競争が衝突になるのを防ぐ」と述べた。習近平国家主席も、両国が「難しい関係にあり、懸念を抱いている」との認識を示した。ロシアのウクライナ侵攻などで分断されかかっている世界にとって、本質的なところで大きな変化はないものの、市場の懸念に反して今回の米中首脳会談は、ポジティブなメッセージを打ち出せたことは大きい。
日経平均は2万9000円台視野も、その後は調整へ
では今後、年末までの日本株はどうなるだろうか。目先はアメリカのインフレが和らぎ、FRBの利上げペースが減速するとの期待から、12月中旬までは日本株も戻りを試す展開が続きそうだ。
具体的に言えば、12月13~14日の年内最後のFOMCに向けて、日経平均株価は2万8500円前後まで上昇しそうだ。もしレンジ相場の上限である2万8614円(9月13日の終値)を抜けるなら、2万9000円台回復も視野に入ると見て、年末までの株価急騰に期待したい。これは前回の予想と変わっていない。
だが、12月中旬までには戻りのピーク(天井)をつけると見ており、それまでにはしっかり利益を確定しておきたい。その後は、年末から2023年の年始にかけて2万7000円程度までの調整をみている。理由は、アメリカの金融引き締めが長期化する見通しは変わっていないからだ。景気後退への懸念は依然重荷となっており、一段の上値を目指す本格的上昇基調を見込むのは時期尚早とみている。
終了した日本企業の決算(約7割を占める3月期本決算企業が中心)についても、全体としては底堅い決算だった。途中集計では発表企業の3割程度が業績を上方修正、その半分程度の約15%が下方修正しており、上方修正が上回った。また、全体では今2023年3月期は営業利益ベースで10%前後の営業増益、来期は1桁前半の増益との見方になっている。その意味で、日本株は良好な企業業績見通しが支えとなりそうだ。
ただし、①今期の業績は輸出・外需関連企業を中心に大幅なドル高円安(上期実績は1ドル=134円程度で、前年同期より24円円安)によるかさ上げ効果が大きい、②原燃料高の影響を価格に転嫁できる・できないで業績に大きな差、③数量面においては、景況感悪化の影響が地域や各産業で顕在化しはじめている、という3つの点を踏まえると、企業の稼ぐ力をしっかりと見極めていくことが必要になりそうだ。
また、中国リスクは引き続き考慮に入れておきたいところだ。ゼロコロナ政策の景気への影響に加え、米中対立が根本的に緩和されたわけではない。世界3位の半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンが今期会社計画を大幅下方修正したが、アメリカが10月に決定した最先端の半導体の中国輸出規制(実質的な輸出禁止)の影響は注視しておきたいところだ。
以上、見てきたように、先行きが不透明な状況は変わらない。アメリカを中心に株式相場は長期にわたって上昇してきただけに、今後の数年間は過去の成功体験が通用しないと考えるべきだろう。それだけに個別銘柄の選別が一段と重要となる。これからは高い競争力を背景に「稼ぐ力」のある企業は来期以降の業績見通し、成長見通しをにらんで評価される局面となりそうだ。気を引き締めて相場と向き合いたい。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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