スペイン高速鉄道「イタリア勢」参入で戦国時代に 日立製新型車両投入、欧州他国へも進出狙う

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では今後、ヨーロッパの鉄道市場はどうなっていくのか、そしてイタリア鉄道は長年のプランであったスペイン参入という大きな目標達成を果たし、次なる目標をどこへ見定めているのか。記者会見の後のパーティで、コッラーディ氏に質問してみた。

ルイジ・コッラーディCEO
記者会見するるトレニタリアのルイージ・コッラーディCEO(撮影:橋爪智之)

筆者の問いに対し同氏は「それはよく聞かれる質問なんだ」と笑みを浮かべつつ、「(オープンアクセスによって)ヨーロッパ市場は開かれた状況にあるため、私たちは常にヨーロッパ中に目を光らせている。トレニタリアは現在、フランス、スペインへと参入することになったが、現在はドイツ・オーストリア市場への参入を目指して現地の鉄道会社と交渉を進めている」と話した。

他国への参入に関しては、トレニタリアは原則的には地元企業と手を組んでの参入を前提としており、ドイツ・オーストリア市場に関して同氏は「ドイツ鉄道と協議を進めている最中だ」と話した。

今後の他国進出も日立製車両?

ちなみにフランスだけは、手を組むための地元企業を見つけることができず、自社でフランス子会社を立ち上げ、例外的に単独での参入となった。「私の頭の中には、まだいくつかの野望がある。それを順次実現させていきたいのだ」と、それまではジョークなどを交えつつ笑顔で話していた同氏が、ここだけは少し真顔になったのがとても印象的だった。

また、他国への参入にあたって気になる車両について、同氏は「私たちは素晴らしい車両を手にしている。TSI(相互運用性の技術仕様)に準拠し、インターオペラビリティに長けたヨーロッパ各国への乗り入れが可能な高速列車、日立製のフレッチャロッサ・ミッレだ」と述べ、今後他国へ参入する際は、引き続き日立製フレッチャロッサ・ミッレを導入していくことを示唆した。イタリアで大きな信頼を寄せられている日立も、今後の展開次第では新たなビジネスチャンスを手にする可能性があるかもしれない。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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