スペイン高速鉄道「イタリア勢」参入で戦国時代に 日立製新型車両投入、欧州他国へも進出狙う

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スペインで義務付けられている搭乗前のX線検査を抜けると、ホームまで赤いじゅうたんが敷かれ、その脇にはiryoの客室乗務員がずらりと並び、胸に手を当て「ようこそ」とわれわれ試乗客を迎える。赤いじゅうたんを含めて試乗会向けの演出ではあるが、激戦区へ参入する同社の強い意気込みを感じる。

iryo trainstaff
赤いじゅうたんを敷いたホーム上で試乗客を出迎える客室乗務員(撮影:橋爪智之)

10時30分、定刻にチャマルティン駅を出発した列車は、トンネルを抜けるとヴァレンシア方面へ加速していく。薄曇りで、ところどころ霧も発生していたが、列車は時速300kmを維持しながらスペインの赤茶けた大地を走り抜けていく。

車内は4クラス、食事は生ハムも

iryoはインフィニタ(Infinita)、シンギュラー・オンリー・ユー(Singular Only YOU)、シンギュラー(Singular)、イニシャル(Inicial)という4つのクラスがあり、このうちInfinitaとSingular Only YOUは横1+2配列の1等席、SingularとInicialは2+2配列の2等席となっている。

4つのクラスはサービス内容などによって差別化され、最上級のInfinitaには食事も含まれる。今回は体験乗車のため、2等車に座った私たちプレス関係者にも地元スペイン産の食材を使った料理やワイン、名産の生ハムなどの食事が配られた。ケータリングサービスはHAIZEAというブランド名が付けられており、バスク地方の言葉で「風の娘」という意味があるという。

iryo 食事
iryoの最上級クラスで提供される食事(撮影:橋爪智之)

食事が終わる頃、わずか2時間少しの所要時間で列車はヴァレンシアに到着した。到着後は駅構内で関係者らによる記者会見が開かれ、iryoの社長カルロス・ベルトメウ氏は「ヴァレンシアへのお披露目走行で、最新世代の列車による高速で持続可能なプレミアムサービスの新しい基準を示すことができたことに大変満足している」と語った。トレニタリアのCEO、ルイージ・コッラーディ氏は、高速列車市場の成長を促す理由にサスティナビリティと環境性能を挙げ、まだ自家用車を利用している長距離移動者を鉄道へ誘導することが重要だと述べた。

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