スペイン高速鉄道「イタリア勢」参入で戦国時代に 日立製新型車両投入、欧州他国へも進出狙う

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iryoに使用される車両は、日立製作所グループの日立レールが製造するイタリアの高速列車「フレッチャロッサ・ミッレ」と同タイプで、列車のブランドもそのままフレッチャロッサを名乗っている。イタリアでの形式はETR400型だが、スペインでは既存の高速列車AVEの続番となるETR109型という形式が与えられた。

iryo frecciarossa
iryoの車両はイタリアの高速列車「フレッチャロッサ」と同タイプ。ブランド名もそのままフレッチャロッサを名乗る(撮影:橋爪智之)

車体そのものはイタリアで運行されている車両とほぼ同一で、塗装もフレッチャロッサ(赤い矢)のイメージカラーである赤を踏襲する一方、内装に関してはクラス設定が異なるため、座席などを中心に違いが見られる。例えばイタリアでは最上級クラスとして横1+1列のエグゼクティブクラスが設定されているが、スペインでは座席の種類は1等・2等の2種類のみだ。代わりに、前述の通り食事の有無などで4つのクラスを設定し、サービスの差別化を図っている。

競合3社、共通の目標は「打倒マイカー」

興味深い点は座席だ。スペインのAVEはヨーロッパでは珍しく、日本の列車のように座席を回転させて進行方向向きに座ることが可能となっているが、iryoはヨーロッパで一般的な固定式の座席となっている。スペインは、初代AVEの100型で固定座席を採用した際に不評だったため、以降の新車では回転座席を採用したという経緯があったが、はたしてiryoではどう受け止められるのかが注目される。

iryo 1等車
1等車の座席は1+2の配列。座席は回転しない(撮影:橋爪智之)

iryoの運行開始によりスペインの高速鉄道は三つ巴の戦いが始まることになるが、3社とも1つの共通した目標を掲げている。それは前述のとおり、「打倒自家用車」である。

スペインに限らず、ヨーロッパの多くの国はマイカーの利用率が高く、対公共交通機関で見た場合にはシェアで大きな差がある。だが世の中の環境意識の高まりから、過去数年で公共交通機関、とりわけ鉄道に対する注目度が高まりつつあるため、各国の鉄道会社は人々の関心が高い今こそが絶好のチャンスと捉え、新たなビジネスを模索している最中なのだ。

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