ぱっと見ジミな「ねぎフェス」に見た意外な可能性 星野リゾートが那須で手がけることの意味

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2021年度の日本人1人あたりの年間野菜消費量(供給純食料)は85.7キログラムであり、1985年度の111.7キログラムと比べて26キログラムも減少している。生活習慣病などを予防し健康な生活を維持するために、国が定めた目標値は1日あたり350グラム、年間に直すと127.8キログラム。これとの差は、じつに42.1キログラムにもなっている。野菜の消費拡大は重要な政策のひとつなのだ。

リゾートだからこそ伝えられる野菜ならではの魅力

何事も、必要性と危機感を伝えるだけでは課題解決には至らない。大人も子どもも、そこにどうしても短期的なお得感を求めてしまうからだろう。

野菜消費量についていえば、おいしさと楽しさを合わせた「野菜ならではの魅力」ということになる。

ある日の1人の参加者が食べたネギの平均本数が、夕食前にもかかわらず2.4本だったことを見ても、「ねぎフェス」は初回から成功したといえよう。

リゾナーレ那須に泊まって野菜好きになる子どもも(写真提供:リゾナーレ那須)

「ねぎフェス」でネギ好きになった子ども、「ねぎフェス」でネギの新たなおいしさを知った大人。彼らがそれまでよりも多くネギを食べるようになる姿が、筆者には十分に想像できた。と同時に、今回の手応えとともにネギへの探求心を高めたスタッフが、われわれのネギに対する固定概念を壊すサプライズをきっと用意してくれるだろう。

リゾナーレ那須は一年中農作業体験を提供できるとともに、農業起点ではなくリゾート起点でイベントやアクティビティーを開発できる強みを持っている。ここで完成度を高めたコンテンツが、他のリゾナーレに広がったり、日本各地のイベントを盛り上げたりすることもありえそうだ。そのためにも、ネギならでは魅力がもっと伝わる「ねぎフェス」への進化と、他の作物への展開がなされることを期待したい。

健康や栄養という学びとしての入り口ではなく、産地における当該作物のプロモーション施策でもなく、楽しさだけを追求したリゾートアクティビティーというこうした試みが広がれば、日本の農業・食品産業に新たな付加価値をもたらす一歩となりそうだ。

農作物を愛する筆者としては、「まだまだ知られていない多種多様なナスの魅力は那須の土地でこそ」という面白さから、リゾナーレ那須における「野菜フェス」の次の企画は、ナス一択だと感じた。

(※橋の高ははしごだか)

竹下 大学 品種ナビゲーター

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たけした だいがく / Daigaku Takeshita

1965年東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれる。技術士(農業部門)。著書に『植物はヒトを操る』(毎日新聞社、いとうせいこう共著)、『東京ディズニーリゾート植物ガイド』(講談社、監修)、『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)等。

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