ぱっと見ジミな「ねぎフェス」に見た意外な可能性 星野リゾートが那須で手がけることの意味

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その点、ねぎフェスのものはひと味違うと高橋さんは反論する。

「『ねぎフェス』は、スペインカタルーニャ地方のカルソッツ祭りを参考にしています。当館のシェフが作った焼きネギに合うロメスコソースとネギ味噌ソースを作り、これによく合うワインも用意しています」

和のネギ祭りに対して、洋の『ねぎフェス』で差別化を図ったというわけだ。高橋さん自身がシェフの衣装でネギを焼く姿も、リゾート気分を盛り上げていた。

刈り終わった田んぼの一角に設営された『ねぎフェス』会場は、リゾートホテルならではの趣向が凝らされていた。SNS映えする写真が撮れるようにとの工夫もお手のものなのだろう。

傍目には、やりすぎ感すら感じるぐらい、ネギを意識させる小道具であふれた空間と山奥の水田とのギャップは、ある意味フェスっぽいのかもしれない。長さ1.5メートルの特注のネギ型クッションも、会場でひときわ目を引いていた。

はたして来場者の反応は…

『ねぎフェス』の開催時間は、午後3時から5時までの2時間のみ。参加者の多くは、その日チェックインを済ませた宿泊客だ。

三々五々に集まっては部屋に戻っていく親子連れやカップル。ネギをオーダーし、思い思いの場所で食べなれない長いネギを頬張りながら語らったり、夕暮れの自然に身をゆだねている。

夕暮れ時にネギを焼く高橋さん(写真:筆者撮影)

「会場は、お客様が火を眺めやすいレイアウトにしました。炭と薪の両方を使うことで、焼き加減のコントロールだけでなく、火の見え方と火のはじける音の演出効果も計算しています」(高橋さん)

自分の身体よりも大きなネギ型クッションに、競うようにして飛びつく子どもたち。ネギにかぶりついて褒められる子どもたち。その姿を逃さず撮影する大人たち。

ネギ型クッションをはじめとする会場演出は、想像以上に子どもたちに人気だった。

特注のネギ型クッション(写真提供:リゾナーレ那須)

一方で、ひとりのおばあさんがポツリと漏らした発言も耳に残った。「想像どおりの味だねぇ」。

祭りの喧騒とは対極のリラクゼーション。幼児からシニアまで、年齢性別問わずに満足できる農作物体感イベント。ゆったり、おいしさと楽しさの両方を味わえる空間。どうやらこれこそが、リゾナーレ那須が実現したいフェスの姿なのかもしれない。

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