日銀重視の物価基調指標の伸びが軒並み加速 「刈り込み平均値」物価目標2%を大きく上回る

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日本銀行が物価の基調判断で重視する各種コア指標は、10月に軒並み伸びが加速した。将来の予測に有効な「刈り込み平均値」は前年比2.7%上昇と物価目標に掲げる2%を大きく上回った。「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」を22日公表した。

刈り込み平均値は9月(2.0%上昇)に続いて2%を上回り、伸び率の拡大は9カ月連続となる。同指標は価格変動が大きい上下10%の品目を異常値として機械的に除いて算出。日銀による先行きの基調的変動の予測力に関する分析では、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)と共に「パフォーマンスが総じて高い」とされる。

日銀は四半期ごとの経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示すコアCPIとエネルギーも除くコアコアCPIの見通しに加え、他の一時的要因の影響を取り除いた各種コア指標を作成し、物価の基調的な動きの把握に役立てている。黒田東彦総裁は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていく下で「基調的な物価上昇圧力は高まっていく」とみている。

品目別価格変動分布で最も頻度の高い価格変化率を示す「最頻値」は1.3%上昇し、初の1%台に乗せた。9月は0.9%上昇だった。最も動きが鈍かった「加重中央値」も1.1%上昇と前月の0.5%上昇から大きく伸びを高め、データがさかのぼれる2001年1月以降で最高。同指標は中央値の近辺にある価格変化率を加重平均している。

上昇品目数の割合も過去最高の78.9%(9月は74.9%)となった。下落品目数の割合の14.6%を差し引いた比率は64.4%で、4カ月連続で50%を上回った。

第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、上昇率の高い食料品の影響が残りやすい刈り込み平均よりも、加重中央値や最頻値が上昇していることに注目する。「全般的に価格上昇圧力が強まっている。これからもしばらくは上がりそうだ」とし、ピークとみている年末にはコアCPIが4%に達してもおかしくないと語った。

10月は食料品を中心に原材料コストの上昇を価格転嫁する動きが一段と活発化し、全国コアCPIは前年比3.6%上昇と前月の3.0%上昇から伸びが加速。1982年2月(3.6%上昇)以来、40年8カ月ぶりの高水準となった。

全国コアCPI3.6%上昇、価格転嫁進み約40年ぶり高水準-10月

(エコノミストのコメントと説明を追加して更新しました)

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著者:伊藤純夫

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