東京駅で反撃、JR東海「エッジ利かせた」販売戦略 コロナ禍だから発見できた「おうち土産」需要

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新たに生まれたスペースはおよそ90平方メートル。決して広くはないが、メインストリートに面する一等地である。11月16日、ここにおうち土産を象徴するようなテナントを迎え入れた。

たとえば、六本木の洋菓子店「アマンド」。昭和バブル期に人気を博した生ケーキ「ナポレオンパイ」を復活販売させた。ここだけしか買えないというレアさをアピールすることで、おうち土産としての需要を訴求する。

東京駅の六本木「アマンド」
六本木の洋菓子店「アマンド」はおうち土産需要を狙ったテナントだ(記者撮影)

一方で、同じく東京駅限定の焼き菓子「ボン・ナポレオン」は「ナポレオンパイのおいしさを再現した。遠方の方にも楽しんでいただきたい」(アマンドの担当者)と、観光客・出張客への目配りも忘れない。店舗は六本木のアマンドと同様にピンク色で構成されている。六本木のアマンドは待ち合わせ場所として有名なだけに、「東京駅での待ち合わせもアマンドで」と同社担当者は意気込む。

アマンドと通りをはさんだ向かい側では、山梨市に本店を置く和スイーツの専門店「和乃果」が新規開店した。シャインマスカット、桃、いちごなど四季折々のフルーツを使ったお菓子を販売する。季節によって売られるものが変わるため、東京ギフトパレットにとっては、リピーター獲得に向けた対策となる。

ほかにも、生ブラウニー、デニッシュなど、一般的なお土産と比べると日持ちがしないスイーツの専門店が新たに仲間入りした。やはり、おうち土産としての需要をにらんだものだ。

鉄道は「堅い」イメージだが…

「このエリアの人通りはコロナ前の7〜8割程度まで戻ってきた」と宇田川社長は話す。多くの人が新たに開業した店舗を興味深そうに眺め、列を作って購入している。

東京ギフトパレットが2020年に開業した際、その年の3月に引退した新幹線700系に使用されていたアルミニウムを店舗の屋根のような装飾に再利用したことが話題となった。今回の新スペースの建材にはN700系の再生アルミを活用した。この「屋根」の下を多くの人が行き交う光景は、社寺の境内にある仲見世を思わせる。

東京ギフトパレットの新スペース
社寺の「仲見世」を思わせる装飾。建材には700系やN700系新幹線のアルミを活用している(記者撮影)

店舗面積をさらに拡張する余地はないというが、「少しでも可能性があれば開発を検討していきたい」と、今後の展開についてもあくまで貪欲。鉄道運行では堅いイメージがあるJR東海が、流通ビジネスに関してはエッジを利かせて攻めているというのは興味深い。

その鉄道事業でも変化が芽生えようとしている。たとえば、東海道新幹線ではグリーン車の上級クラス座席を検討中。これまで新幹線は編成ごとの座席配置を同じすることで効率的な運用を行なってきたが、「この考え方にはこだわらない。今後は柔軟に考えていきたい」と、JR東海の丹羽俊介副社長が話す。

JR東海のさまざまな事業でエッジの利いた動きが広がりつつある。新幹線にユニークな動きが登場する日は遠くなさそうだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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