由紀夫氏の祖父である・鳩山一郎元首相は、日ソ友好条約に腐心した人物だった。由紀夫氏の父の鳩山威一郎氏も、日露関係の改善に努力した外務大臣であった。由紀夫氏本人も日本国首相として、日露友好協会会長として北方領土問題の解決に努力してきたことも事実である。
私などは、由紀夫氏があと50年遅れて生まれてきていたら、ノーベル平和賞を受けるに値する偉大な政治家になったと思っているくらいだ。真の理想と哲学の持ち主だと最大の賛辞を与えたい気になっている。なぜなら、自分の理想を行動で表しながら、ロシアに対して、日本人としての一つの意見を表明しているからだ。
もっとも、ロシア側も、由紀夫氏の扱いには困っていることも予想される。日露関係というガラス細工のような繊細で壊れやすい宝物を、どこに飾れば良いのかを模索している時に、由紀夫氏という確信犯がセバストポリに乗り込んできたからである。
ただ、専門家はお見通しだが、プーチン大統領は日露平和友好条約の締結とサハリンの天然ガスの共同開発とシベリア開発を心から推進したいと考えている。これまでも何度となく日本政府にラブコールを投げかけているのに、私から言わせれば、日本の「洗脳されたロシア性悪説論者」が邪魔をしているのだ。
早い話が今回の由紀夫氏を貶めようとしている面々とも言える。「ロシア性悪説」論者には悪気もなければ自覚もない。ひとことでいえば、問題を掘り下げて考えようとしない、単純で怠惰な評論家たちである。
外交は、そう単純ではない
私の専門は政治ではなく商人である。しかもレアメタルという、極めて狭い分野の専門家である。従って政治問題を評論する気は全くないが、鳩山由紀夫氏という宇宙的な発想をする人物には興味がある。
政界を引退したといえども、今回のように、日露問題においては「レアメタル的な貴重な存在感」を放っているからだ。このような希少性のある発想がなければ、北方領土問題の解決は不可能である。
誤解のないようにいっておくが、私は米国が好きだ。だが、一方で、対米一辺倒型で万事うまくいくほど、外交は簡単ではない。米国一辺倒では得られるものは極めて少ないのもまた事実なのである。新興国を中心にレアメタルビジネスを展開している筆者だからこそ、声を大にして訴えたいのだ。
「クリミアはロシア固有の領土であり、北方領土は日本固有の領土である」。由紀夫氏がクリミアに対して表明した正論は、実は北方領土問題にそのままあてはまるロジックであることを、日本国民の大半は気づいていない。
おそらく、冒頭の由紀夫氏の発言を踏まえ、彼が本当に言いたいことは次の3点だ。まず「北方領土が元々は日本固有の領土であること」、二番目は「元来北方領土に住む国民が選挙をしていたなら、圧倒的多数で日本に帰属させるべきだと投票していたはずだ」、三番目は「北方領土におけるロシア人と日本人は兄弟のような関係だから、他国の干渉を受けず、双方で平和的な解決を模索するべきだ」との意見である。
本当に孤立した時に助けてくれる人を尊重するのがロシア人気質であることを熟知しているのが、鳩山由紀夫氏である。
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