第2は、イノベーションの創出にはインセンティブと知的財産権の保護が欠かせないことである。
イノベーションがもたらす超過利潤を追求する企業が果敢に投資を、とりわけ研究開発投資をするからこそ、イノベーションは創出される。よって利益の確保を可能にする要素、とくに知的財産権の保護にはイノベーション投資を促す効果がある。
逆に、知的財産権が保護されないとかイノベーションの利益に懲罰的な課税が行われるなど利益が脅かされるような状況では、イノベーション投資は進まない。一般に、イノベーションは制度や政治によるインセンティブがプラスなら促進され、マイナスなら減退する。この意味でイノベーションは社会的なプロセスだと言える。
そして第3のアイデアは、創造的破壊である。
新しいイノベーションは過去のイノベーションを陳腐化させる。別の言い方をするなら、創造的破壊による成長は、新しいものと古いものとの衝突を恒常的に引き起こす。よって既存企業とりわけ大企業は、自分たちの守備範囲への新規参入を阻止するか、せめて遅らせようと戦い続けることになる。
こうしたわけだから、創造的破壊は成長プロセスそのものにある種のジレンマをもたらす。一方で、イノベーションに報い、イノベーションの意欲を高めるには超過利潤が期待できなければならない。
だがその一方で、その超過利潤が将来のイノベーションを邪魔するために使われてはならない。
資本主義を資本主義者から救う
先ほど述べたように、シュンペーターは資本主義の未来について悲観的だった。資本主義は、新しいイノベーションを阻もうとする既存企業の企てを抑えられないがゆえに衰退するという。
だが私たちは、このジレンマを乗り越えること、言い換えれば資本主義を適切に規制することは可能だと考えている。
ラグラム・ラジャンとルイジ・ジンガレスの著作のタイトルを借りるなら、「資本主義を資本主義者から救う」〔邦訳『セイヴィング キャピタリズム』慶應義塾大学出版会〕ことはきっとできるはずだ。
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