下着ユニバが「令和らしい炎上」である3つの理由 バカッターの歴史が若い世代に受け継がれず…

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「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」とは、よく言ったものだ。ただ、インターネットの普及した現代は、それぞれの井戸が自由に行き来できて、大海からも丸見えなことを忘れてはならない。交流が友人・知人など、近いコミュニティ内に限られているようでも、常に衆人環視にさらされている前提でなければならない。

もちろん、内輪ノリには負の側面しかない、というわけではない。内輪ノリから行き着いた先に、ファンや信奉者が増えてくる場合もあるからだ。知名度に比例して、経済圏も広がり、収益も立つようになるだろう。

しかし、さらに承認欲求を満たそうと、その影響力をテコに、「炎上してナンボ」と活動の幅を広げる者もいる。迷惑系YouTuberによる犯罪行為などは、わかりやすい例だろう。

SNSの進化で流入経路も変わっていった

SNSが進化するにつれて、コンテンツの中身だけでなく、流通経路も変わってきた。ツイッターでは、かつては「タイムライン」と呼ばれる、投稿が投稿日時順に並ぶ形式が一般的だったが、技術の進歩によって、ユーザーの行動から、興味を持つと思われるコンテンツを機械的に類推し、「おすすめ」として上位表示されるようになった。

好みのコンテンツに出会いやすくなった反面、わざわざ投稿者のタイムラインをたどる機会は減っていく。うまく文脈が伝わらないまま、画像や映像のみがひとり歩きして、異なるコミュニティにいる人にも届き、炎上ネタを拡散する「炎上系インフルエンサー」に目を付けられる。インスタでの内輪ノリが、ツイッターでの炎上ネタへ。その頃には、すでに「井の中」で対処できるレベルではなくなっている。

今回の事案は、週をまたいでもなお、非難の声は絶えない。ネットユーザーは、時として「都合のよいサンドバッグ」とみなした相手に対して、完膚なきまでの「私刑」を加えることがある。

服装の是非から飛び火して、インスタグラマーが出たとされる高校にも注目が集まり、その校名もまたトレンド入りした。別件で話題になったインフルエンサーも、同じ高校出身だったとして、スポーツになぞらえて「TikTok強豪校」といったフレーズも飛び交っている。

たしかに、共通したコミュニティに属していると、考え方が似てくる部分はありそうだ。ただ、そこに生活する(してきた)人々すべてが、まったく一致した価値観を持っているワケがない。「同じ高校だから」と安易にカテゴライズすることに、筆者個人は批判的な立場だが、ネットユーザーたちは、どこか「地元ノリの空気」と捉えたのだろう。

仲間内と世間での価値観の違い、インスタとツイッターといったサービスによる文化の違い。そして、技術革新によって断ち切られた文脈ーー。それらが複合的に絡み合った結果、ここまで燃え上がった。「令和の炎上」は皮肉にも、ネットユーザーの増加と、技術の進歩によって、テンプレートができつつある。

「下着ユニバ」そのものをめぐる議論は近々、沈静化するだろう。ただ、昨今の炎上をめぐるメカニズムについて、一人ひとりがリテラシーを高めない限り、すぐまた同じような事案が起こるはずだ。次に燃えるのは、あなたや、あなたの大切な人かもしれない。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。現在は東洋経済オンラインのほか、ねとらぼ、ダイヤモンド・オンライン等でコラム、取材記事を執筆。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid
公式サイト:https://zuru.org/

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