米アップルがさらした中国生産委託の“暗部”
米アップルが2月中旬、サプライヤー2社が中国で起こした不祥事について詳細を明らかにした。サプライヤー・マネジメントに関する毎年定例のレポートの一部で、企業名を挙げて詳細を明らかにしたのは異例だ。
不祥事の一つは、「アイフォーン」や「アイパッド」を受託生産している電子機器製造請負サービス(EMS)、台湾・鴻海精密工業系列の深セン工場で、2010年に起きた従業員の連続自殺事件。社外の専門家チームが現地で従業員への聞き取り調査などを行った結果、悩み相談のホットラインの充実などが必要と判明したとしている。
もう一つはタッチパネルをEMSに供給する台湾・勝華科技が2010年に蘇州工場で起こした化学物質中毒事件。従業員137人が健康被害を受け、現地メディアや市民団体が激しく反発していた。アップルは初めて事件を認めただけでなく、勝華に対し原因物質の使用を中止し、専門家を交えて再発防止プロセスを策定するよう要求したことや、被害者の健康回復状況をアップル自身で追跡していることを明らかにした。
レポートではこのほか、91社で児童労働が確認されたことなどを公表。ブランドイメージを損ないかねない赤裸々な内容だが、日本の電子機器メーカーにとっても無縁ではない。
鴻海のような中国に工場を持つEMSには、ソニーや東芝、任天堂など多くのメーカーが生産委託している。液晶テレビやモバイル機器などの分野では高性能化と裏腹に価格下落が激しく、生き残るにはローコスト経営を売りとするアジア企業との生産提携が必須。ただ、こうした生産の外部化ではコスト削減の効果が強調されてきた半面、そこに潜むリスクについては看過されてきた感が否めない。