36歳会社員の彼が「育児うつ」になった驚きの経緯 子育て見据え地元企業に転職した後に起きたこと

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最近は産前の両親学級に参加するパパも多いが、そこでパパ友ができるかといえば、それも難しい場合がほとんどだ。社会とのつながりは「会社だけ」という男性も多いため、育休で家にいることが長くなれば、孤立感が生まれやすくなる可能性は高い。とくに新生児の期間は家にいることが多いため、外との関わりも遮断される。

「パパコミュってTwitterくらいしかないんですよね。育休パパのコミュニティーは深いけど狭いという感じがします」

とはいえ、歩いて行ける距離感のご近所育休パパにはほとんど出会わない。中西さんは、顔の見えるパパ同士の横のつながりをつくろうと、同年代の子どもを持つパパ数人で集まり、立川市を中心に「パパママ子育て応援部Hiタッチ!!」というグループを作り活動をはじめた。

産後パパへのケアはまだ確立されていない

こうした状況に、男性も気軽に相談できる窓口が必要だという専門家もいる。チャットで質問ができる「産婦人科オンライン」の代表も勤める産婦人科医の重見大介さんだ。産後パパに対するケアは、ママに対するケアと比べてまだ確立されていない印象があるという。

ただ、重見さんによれば、実際に海外では女性の産後うつを診断する際に用いられる「エジンバラ産後うつ病質問票」を使い、男性の産後うつチェックをしているという事例も出てきているという。

「女性の産後うつを誘発する要素としては、出産によるホルモンバランスの変化や、環境の変化、睡眠不足といったことが言われています。ホルモンバランスは女性特有のことですが、環境変化や睡眠不足は男女関係なくおこりうることです。男性が産後うつになるのは珍しいことではありません。産後の検診のときなどに男性も受けられるものを検討するなど、今後、受け皿の検討が必要になると思います」

うつに苦しんだ平松さんは今回、自分が声を上げることで苦しむパパが救われるならと取材に応じてくれた。父親となった男性に対するケアの態勢づくりが必要とされている。

宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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