突如SL復活、インドネシア「製糖工場」の鉄道事情 石油価格高騰で「燃料実質タダ」の機関車活躍

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実は、シュガートレインの存在は我が国の鉄道車両輸出とも無縁ではない。筆者が昨年執筆協力した日本鉄道システム輸出組合(JORSA)世界鉄道市場便覧インドネシア編にも「産業用鉄道」の章があり、戦後に北陸重機製を中心とした小型のディーゼル機関車が多数輸出され、統計に計上されているものだけでも70両近くに及ぶ。ローリーも数百両が日本から輸出されているようだ。

北陸重機製14トンDL
フィールドに線路を保有する数少ないPGスンボロ。産業用機関車然とした北陸重機製の14トン機を先頭に走る(2014年、筆者撮影)
3号機
サトウキビを満載したローリーの先頭に立つヤシマ製のディーゼル機関車PGレジョサリ3号機(筆者撮影)

なお、東ジャワ州シトゥボンドのスンボロ、ジャティロト、ウリンギナモン、クダウンの各PGでは、フィールドに出る最後のシュガートレインとして今年も工場外を走るディーゼル機関車が確認されており、100km以上の路線網が維持されている。前者2つは、SLを比較的最近まで保有していたことから愛好家の間で名が知られているが、後者2つはほとんど知名度がないのではないかと思う。

政府は合理化と近代化を推進

まさに産業革命の申し子、そしてオランダ植民地時代の象徴と言うべき設備が今もなお現役なのは、産業遺産的見地からも極めて興味深いことではある。しかし、100年以上もの間、何の変化もなく操業を続けていることは非効率極まりなく、現在、国営PGは大幅な赤字に陥っている。主にジャワ島外にある近代的設備を有する民間PGは、国営PGの倍以上の生産能力を有していることからも、技術革新の遅れが大きな足かせになっているのは明らかだ。

製糖工場蒸気機関
蒸気機関で勢いよく回る巨大な歯車。これが製糖工場の動力源(2014年、筆者撮影)

甘くない飲み物がないというくらい、インドネシア人は砂糖好きだ。コーヒーもお茶も、何も注文をつけなければたっぷりの砂糖を入れられてしまう。それほどインドネシアの重要産品である砂糖だが、年間生産量は2013年のおよそ270万トンで頭打ちの状態で、以降減少に転じている。反面、消費量は増えており、今では砂糖の一大輸入国となった。一方で、サトウキビの作付け面積は微減といった程度で、いかに生産効率が悪いかということを示している。近年の砂糖輸入量の増大に関しては政府も問題視している。

かつて、中部ジャワ州のPGを運営していた第9国営農園のイリアント氏によると、政府は現在、PGの選別と合理化を進めると同時に一部を近代化する予定だという。政府はジャワ島に45カ所あったPGのうち、生産性の悪い工場を閉鎖し、将来的に半数程度まで削減する計画を立てている。また、エリック・トヒル国営企業相の推し進める国営企業健全化政策の一環で、先述のSGNが設立されており、PGの合理化が加速するものと予想される。

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