首相が速攻で辞任「英国」で何が起きているのか 「レタスよりもたなかった」首相が招いた崩壊

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何が崩壊につながったのか?

就任当初からトラス氏の前途は多難に思われた。就任したとき、イギリス経済は痛ましい状況に直面していた。その最たるものは10月に80%、さらに1月に再び高騰することが予想されていた光熱費だ。これは、すでにインフレやその他の課題に苦しむ数百万のイギリス人を貧困に追いやり、自宅で暖房を使用したり、電気を使ったりすることを困難にする脅威にさらすものであった。

そのため、同氏の肝煎りの経済計画がすぐに事態を悪化させたことは歓迎されない知らせだった。

同氏が発表した減税・規制緩和・国債の計画に対して世界の投資家は強い危機感を示し、イギリスの通貨ポンドはアメリカドルに対して歴史的な安値を記録していた。市場の沈静化に向け、国債の価値を保つためにイングランド銀行が介入したが、これは異例なことだ。

その反応は、彼女の自由市場的な野望は議論が立たないことを明確に示した。屈辱的な撤回を余儀なくされた同氏は、ほぼすべての減税政策の撤回に追い込まれ、その中には特に批判の強かった高所得者向けのものも含まれていた。トラス氏は、一連の計画を主導し、同氏の僚友であったクワジ・クワルテング財務相を更迭し、野党・労働党が主張する経済政策を受け入れた。

リヴァプール大学で政治学を専門とするジョン・トンジェ教授は「彼女が行ったようなUターンで政治的信用を維持することは不可能だ」と述べる。

支持率が史上最低水準に

トラス氏の首相職が危機にさらされた理由は?

彼女がとった妥協は、ジョンソン氏を辞任に追い込んだものと同じ権力を持つ自身の党内からの批判を和らげることにはほとんど役に立たなかった。

「トーリー党」の異名を持つ保守党は、ジョンソン氏の一連のスキャンダルの結果、世論調査での支持率が低下しており、それはトラス氏の失政で驚異的な低さまで落ち込んでいた。今週のレッドフィールド&ウィルソン・ストラテジーズの調査によると、首相としての支持率が史上最低水準に落ち込み、保守党支持者の67%を含む70%の不支持率を記録したことが明らかになっていた。

総選挙が今日行われた場合、56%が労働党に投票し、保守党に投票する人は20%である、と同調査は示している。

これによってトラス氏に対する保守党の不満は膨らみ、彼女の周辺は明らかに危機感に覆われていた。19日にそれは、生き残りをかけた戦いとして表面化し、国会で議員たちからの批判を浴びた同氏は「私はファイターであり、諦める者ではない」と述べていた。

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