今の北朝鮮の核開発は日本にとっていかに危険か 実際に撃ち込める能力があるとしてどう備える?
小野寺五典氏(自民党安保調査会長、元防衛相):(中朝は)連携しているわけではないと思うが、(北は中国に)気はつかっているのではないか。共産党大会の前にできるところまでの訓練をやっておくと。米韓合同軍事演習への対抗もある。共産党大会終了後は、核実験の緊張がかなり高まるフェーズに入ると思う。日本にとっては安全保障上、ますます厳しい状況になる。
最近やけに射程の短いミサイルが多いのはなぜ
小泉悠氏(東京大学先端科学技術研究センター専任講師):気になるのは、今回、戦術核部隊の訓練だと明言して打ったミサイルがあるということ。北朝鮮は去年策定した国防5カ年計画以来、核兵器の戦術兵器化を図るとして着々と進めている。最近やけに射程の短いミサイルが多いのも、戦術核を搭載することを念頭に置いているのだと思う。最終的にはすごく小さな核弾頭が必要で、7回目の核実験が必要になる。小さな核弾頭を戦術兵器として使うということは、まず数が相当増えると思う。北の核保有量がこれからバッと増える。通常、米軍やソ連軍の場合、ある程度緊張が高まったら戦術核兵器を前線に配ってしまう。配って現場の指揮官に対し、これこれの条件で打ってよしと事前に権限を付与する。核使用の不安定性は高まる。北朝鮮の核問題は新しいフェーズに入ったなという感じを持っている。
松山キャスター:北朝鮮が発射したミサイルの中には、貯水池から発射したSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)もあった。日本が検討している反撃能力をどこまで保有するかの議論にも影響する。
橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):(反撃能力保有に関する)国会での議論がおかしな方向に行っている。法律家の議論になってしまっている。着手の議論、要は先制攻撃になるかどうかの議論に陥ってしまっていて、これ、政治家の議論じゃないと思う。先制攻撃は絶対やってはいけない前提で、いざ反撃するときにどれだけ強い反撃能力を持つかだ。先制攻撃の議論と能力の問題がごっちゃになっている。「必要最小限」も砂川判決では「必要性」までだったのに、内閣法制局の回答で「必要最小限」と、「最小限」も入ってしまった。法律家の議論としてはいろいろあるが、能力として必要最小限なのか、能力は最大限持っておいて、いざ使うときに必要最小限なのか。自衛力、能力は最大限持っておかないと。災害対応にしたって何にしたって、国民を救うためには国家は最大限の能力を持って、だけど、使うときには均衡性の原則などで必要最小限の使い方をする。日本では能力まで必要最小限になって、おかしな議論になってきた。反撃能力と先制攻撃と議論が錯綜(さくそう)している。