「羽田新線」の議論で示された"不都合な真実" 空港アクセスのどこを改善すべきなのか

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具体案を出せない国交省の小委員会を横目に、同じ3月3日、東京都は東京オリンピックに向けた都心と臨海副都心を結ぶBRT(高速バス輸送システム)の構築について、「基本計画に向けた中間整理」を発表した。こちらは東京都交通局や京成バスといった事業協力者が選定され、ルート案も発表されるなど、計画が着実に進んでいることがうかがえる。

都はJR東日本の案を最有力と判断

どの案が空港利用者に利便性の高いものなのか(撮影:梅谷秀司)

さらに都は3月6日、首都圏の整備すべき鉄道路線を示す「広域交通ネットワーク計画」の中間まとめを発表した。

整備を検討中の路線は約20あるが、その中でも「整備効果が高い」と位置づけられたのは、多摩都市モノレールの延伸や東京8号線延伸(豊洲ー住吉間)など5路線。JR東日本の羽田アクセス線も名を連ねた。

一方で、蒲蒲線や東京モノレール延伸、成田・羽田直結線などの名前は、「整備効果が高い」5路線の中になかった。つまり、都は新たな空港アクセス線について、現段階ではJR東日本の提案を最有力候補と判断したわけである。

都の広域交通ネットワーク計画は、来年3月までに取りまとめられる国交省の審議会答申と整合を図るとされている。都の計画が国交省の答申に大きな影響を与えることは間違いない。

JR東日本の羽田空港アクセス線は総事業費3200億円、蒲蒲線も1080億円という巨額の資金が必要になる。鉄道事業者だけでは手に負えず、国や都の資金も投入されるビッグプロジェクトである。

今回の国交省作成資料を見る限りでは、新たなアクセス線は必要ないようにも思える。拙速に走らず、オリンピックと切り離し、需要予測も見極めながら腰を据えて議論すべきであろう。

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