日本は「成熟した債権国」の終わりに来ているのか 季節調整値で2カ月連続の「経常収支赤字」を記録

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筆者はほぼ毎日、多様な業種の事業法人の方々とお話させていただく機会に恵まれている。年初9カ月間で見られている円安は、輸入企業のみならず輸出企業にとっても苛烈なものであり、長期的な為替戦略の必要性を検討し始めている事業法人は少なくない。

また、為替の変動率が高く、社内レートが固定しづらい状況が続くと予算が立ちにくくなる。それ自体を事業リスクと見なす向きはある。例えば輸出企業であっても、手持ちの円貨をどうすべきかという論点は浮上する。これだけ相場が乱高下すれば「このままで良いのか」という悩みはどうしても出てきてしまう。

詳しくは拙著『「強い円」はどこへ行ったのか』の中で整理しているが、「円安は日本の大企業製造業を中心にメリットがあるので、日本経済全体にとってプラス」という主張は「さまざまな条件を一定にして緩やかに円安が進んだ場合、GDP(国内総生産)成長率にとってプラス」という総論であって、現場知らずだと感じる。各論を見ればもっと考えなければいけないことがある。

輸入コストの上昇は輸出企業にも痛手

例えば、ごく足元に目をやれば、国内に生産拠点を構える輸出企業は円安を販売上では追い風と感じつつも、部材の供給制約に悩んでいるケースは多いように見える。そうなると円安で攻勢をかけようにも思ったほど生産が進められないことになる。

また、日本経済全体として加工貿易の性格が色濃いため、部材が高騰しているところに円安が加わると輸出企業が「高いものを輸入して、安いものを輸出している」構図に直面しやすくなる。これはGDP統計上の交易損失として今次局面では頻繁に問題視されているところである。

筆者の観測できる範囲での肌感覚に過ぎないが、「円安は日本経済全体にとってプラス」と言って納得する日本企業は輸出企業であれ、輸入企業であれ、現状では決して多くないように思える。もちろん、その感覚が絶対に正しいと言うつもりはないし、経済分析上で得られる「円安は日本経済全体にとってプラス」という結論を正義とする総論にも立場があることは理解する(日銀のように)。

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