日本は「成熟した債権国」の終わりに来ているのか 季節調整値で2カ月連続の「経常収支赤字」を記録
筆者は近著『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経プレミアシリーズ)で、日本が「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」への道を歩んでいる可能性を議論し、今次円安の背景について構造的な視点を持ったほうがよいのではないかと提案をしているので、併せてご参照いただきたい。
実際に「債権取り崩し国」に近づいているかどうかは事後的にしかわからないことではある。そもそも国際収支の発展段階説で提示される6段階は「必ずそうなる」とか「その順番通りに進む」とか、何らかの確定した未来を約束するものではない。
英国のように一周して最後の段階の「債権取り崩し国」から最初の段階である「未成熟な債務国」へ戻ってきても、国際金融センターを擁するがゆえに安定を享受するケースもある(もっとも、直近では金融市場の懸念を高めるような政策を打ち出して不安定になっている)。
円高への揺り戻しはあっても長期では円安方向
しかし、世界で3指に入る経常黒字国だった日本で季節調整済みの経常黒字が消滅し、「円安の年」としては1985年のプラザ合意以降で最大の値幅を更新している状況を前に、構造的な円安の可能性を議論しないのはやはり真摯な分析態度とは言えないだろう。円安が始まった今春時点で、こうした論調を提示すると「日本の経常赤字は一時的であり、構造的な円安とはいえない」という反駁が多かったが、そうした論陣もだいぶ後退した。
もちろん、円が変動為替相場制で取引され、ドル全面高が事実として相当極まってきている以上、いずれかの時点で円高への揺り戻しはあるだろう。しかし、それを反転上昇ではなく「長期下落トレンドの中での押し目」と整理する立場はかつてよりも増えるのではないか。
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