「高給与の会社」は株式パフォーマンスも良い現実 平均年間給与「高い企業」「低い企業」の比較結果

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このような株式パフォーマンスに格差が見られる背景には、平均給与の高い企業と低い企業の企業業績に格差があることです。業績の違いが株式パフォーマンスの違いに表れたと見られます。近年、多くの企業の経営目標に設定されるROE(株主資本利益率)を使って業績の格差を見てみましょう。

ROEとは、企業が株主から調達したお金の見返りとして、株主にどの程度の利益を提供できたかを見る指標です。一般に、ROEは8%を上回る必要があるとされています。分析対象期間の2010年度以降で見ると、給与が低い会社のROEは平均6.1%に過ぎませんでしたが、給与が高い会社は8.4%と8%の目標をクリアしていました。

年間給与が高いと従業員に何が起こるのか

今回は年間給与の高い企業の株式パフォーマンスが、低い企業と比較して優れていることを紹介しました。いま一度、結果を整理しましょう。年間給与が高いということは、良い人材を確保して、従業員の仕事に対するモチベーションもあがります。企業活動が良くなることから業績が好調となり、高ROEの実現とともに株式パフォーマンスが良くなることがわかりました。

今回の分析では、平均給与が高い企業の基準は母数のなかで上位から3分の1までの企業としましたが、実際の平均年間給与での水準で見ると720万円程度を上回る企業となりました。

平均年間給与のデータは、上場企業は必ず公表する有価証券報告書の「従業員の状況」という項目に記載されています。それぞれの企業が公開している自社のウェブサイトから気軽に入手できますから、一般の方々でも投資の参考に使うことが可能です。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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