年金をおトクに受給する「平均寿命+12年の法則」 何歳からもらうと総額を最も多くできるのか
年金戦略を考えるということは、「少ない金額を長くもらい続ける」のと「多い金額を短い期間もらう」のとを比べ、その「損益分岐点を探すこと」ともいえる。
それでは、その損益分岐点はどこにあるのか。これは、「寿命」による。100歳まで生きられるなら、75歳から増えた年金を25年間、もらい続けるのが生涯にわたって受け取る年金をもっとも多くできることはすぐにわかる。80歳で亡くなってしまうのであれば、65歳から繰り下げ増額はなしでも15年間、もらい続けるのがトクになる。このように、実際のところは「寿命」という不確実な要因によって左右されてしまうところが大きいのだ。
「プラス12年の法則」で損益分岐点を探る
とはいえ、「自分が何歳まで生きるか」は、誰にもわからない。そこで、平均余命を考えてみる。
平均余命とは、ある年齢の人が「あと何年、生きることができるのか」かという期待値だ。厚生労働省の簡易生命表で、「65歳の人の平均余命は男性で20.05年、女性で24.91年」、つまり、「今、65歳の男性なら平均的にはあと約20年間、85歳になるまで、女性なら約25年間、90歳になるまでは生きられるだろう」と知ることができる。ちなみに、0歳の人の平均余命が、いわゆる「平均寿命」だ。
自分がこの平均余命(平均寿命)まで生きるとすれば、例えば、65歳、70歳、75歳から年金をもらい始めた場合の総額がわかる。
実際に計算してみよう。ここでは、65歳の男性のAさんが、平均余命(平均寿命)の85歳まで生きると仮定してみる。Aさんが受け取る年金額は、厚生労働省の「令和4年度の年金額改定」に従う。標準世帯(夫婦二人)の毎月の年金額は約22万円で、そのうち夫が受け取る年金額は老齢基礎年金が約6万5000円、老齢厚生年金が約9万円で合わせて約15万5000円となっている。これをAさんにあてはめて計算すると次のようになる。
約15万5000円×12カ月×20年間=約3720万円
約15万5000円×1・42×12カ月×15年間=約3962万円
約15万5000円×1・84×12カ月×10年間=約3422万円
70歳に繰り下げて受け取ったほうが、もっともおトクであることがわかる。つまり、70歳が損益分岐点といえる。
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