年金をおトクに受給する「平均寿命+12年の法則」 何歳からもらうと総額を最も多くできるのか
ただし、これはAさんが「平均余命(平均寿命)まで生きる」と仮定した場合のこと。平均余命(平均寿命)より前に亡くなってしまうことも平均余命(平均寿命)を超えて生きることもありえる。つまり、人それぞれ事情が異なるのに、一律に70歳からの繰り下げ受給がもっともおトクになるのだろうか。そこで、自分にとっての損益分岐点を探るための「プラス12年の法則」を覚えておいていただきたい。
自分にとっての年金戦略のセオリーとは?
「プラス12年の法則」とは、年金の受給開始を65歳よりも後ろに繰り下げた場合、概算上「受け取り開始の年齢に約12年をプラスした年齢になったとき」に「65歳から受給開始していた人の総額に追いつく」ということ。厳密には「11歳10カ月後」に追いつくことになるのだが、わかりやすく約12年とした。
この「プラス12年の法則」で考えると、例えば、68歳から受給を開始したら、「68歳+12年=80歳」のときに65歳から受給開始した人が受け取った年金の総額に追いつくことになる。70歳から受給開始した場合は82歳で、73歳から受給開始した場合なら85歳のときに、65歳から繰り下げなしで受給を開始した人の総額に追いつく(いずれも税金・社会保険料は勘案せずに概算で算出)。
繰り下げ受給をしても65歳から受け取り始めた場合の年金の総額を超えることができないのであれば、繰り下げる意味はなく、65歳から受け取り始めるほうがいいだろう。
先述のAさんの例で計算すると、70歳からの受給開始に繰り下げると、まず、82歳で65歳から受け取り始めときの総額に追いつき、平均余命の85歳に達したときには「余裕で65歳から受給開始の総額を上回っている」ことになる。
一方で、Aさんが75歳からの受給開始にまで繰り下げてしまうと、「プラス12年の法則」で考えればわかるように、87歳を超えないと65歳から受け取り始めた場合の年金の総額に追いつくことができない。平均余命(平均寿命)の85歳を超えてしまうのだ。
この「プラス12年の法則」を頭に入れておけば、例えば、73歳から受け取りを開始するなら、「85歳を超えればおトクになり、反対に85歳までは生きないと損をしてしまう」といったことがわかる。「年金は損得で考えるべきものではない」という考えは大切ではあるが、「プラス12年の法則」によって年金受給の損益分岐点が見えてくるのだ。
さて、今回は平均余命(平均寿命)と「プラス12年の法則」について説明した。自分の現在の年齢や健康状態などにあてはめて、例えば現在55歳の男性で「平均余命(平均寿命)の84歳までは健康でいられる」自信があるなら、「プラス12年の法則」から72歳を損益分岐点として、「72歳まで受給開始を遅らせる」ことを検討するのが良いだろう。
平均余命と「プラス12年の法則」を踏まえて、自分にとっての損益分岐点を探す、これが年金戦略を考えるセオリーといえる。
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