シダックスTOB、混乱を収束させた「直接交渉」 オイシックスが27%出資へ、具体策は今度提案

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「事態を打開するには、オイシックスとの距離を縮めるしかないと思った」。柴山専務はそう振り返る。柴山専務は9月26日の取締役会でオイシックスの高島社長との直接交渉を提案。出席していた志太会長兼社長の賛同を取り付けた。

その後、両者は約2週間の間に、5回程度の面談を持った。「最初はギクシャクもしたが、話し合えば、お互いに背負っているものが見えてくる」(柴山専務)。他社からの提案との比較がないまま、オイシックスにフード関連事業を売却すれば、取締役の善管注意義務を問われる可能性もある。柴山専務のそうした主張に、オイシックスの高島社長も理解を示すようになったという。

複雑な「2階建て」構造

それぞれの思惑はあったが、「顧客から不安の声も聞くようになり、長引かせたくはないという思いは共通していた」(同)。交渉を重ねた結果、両者は合意に達した。

シダックスはTOB成立後、協業について検討する特別委員会を設置する。特別委員会は弁護士や会計士など外部人材をメンバーとして、資本の移動を伴う協業など重要な案件を検討し、取締役会に答申を出す。特別委員会ではオイシックス以外との協業の可能性も広く検討する。

また、特別委員会の下部組織として、業務提携検討委員会を設置する。検討委員会は、協業相手の会社ごとに設置し、資本移動を伴わない協業内容を検討する組織だ。

特別委員会の下に業務提携検討委員会を設けるという複雑な「2階建て」構造になったのは、これまでの交渉経緯が影響している。TOB成立後、オイシックスとの協業は検討委員会で迅速に進める。ただしそれはフード関連事業子会社への出資がない前提であり、子会社への出資や売却まで踏み込むかは、協業の内容や進捗を特別委員会で時間をかけて検討する。

柴山専務は「現在、われわれとしてフード関連事業を売却したいわけではない。オイシックスとは少なくても1年程度はかけて協業内容を検討したい」と語る。その間に他社からの協業の申し出があれば、オイシックスとは別に検討委員会を立ち上げ、協業を推進する。さらに、今後、単独でフード関連事業を進める選択肢も残している。

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