元運転手が激白、「東京のタクシーは危ない」 3年間運転手となった作家が知った真実

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矢貫隆(やぬき・たかし)●ノンフィクション作家。1951年生まれ。『自殺-生き残りの証言』(文春文庫)『救えたはずの生命-救命救急センターの10000時間』(小学館文庫)など、交通問題や医療問題を中心に執筆活動を行っている(上の書影をクリックするとAmazonの販売ページへジャンプします)。

――国は過当競争を是正するため、特定地域を対象にタクシー事業者へ減車を促そうとしています。現在挙がっている対象候補は29地域で、正式に計画が決まった後に従わない業者がいれば、国土交通省が一定期間の営業停止を命じることができます。

本来は規制なんてない方がいいです。マスコミなども「規制緩和の流れに逆行」、「利用者の利益を損なう」といった規制に反対する論調が多い。経済合理性の見地からはまったくその通り。しかし、タクシー業界に関しては、私はある程度の規制は必要と考えています。

利用者が街で行き当たりばったりで拾うことが多いタクシーは、料金以外のサービスで差別化することが難しく、過当競争になりやすい。利用者は駅でタクシーを待っている時、並んでいた順番通りに乗ります。街で流しのタクシーを捕まえる時も、急いでいるのでどこのタクシー会社かあまり気にしません。運転手としても、お客さんを乗せるのは早い者勝ちというのが実感です。

東京の人身事故の約10%をタクシーが起こしている

そこで問題になるのが、「安全」です。2013年に東京でタクシーが起こした人身事故件数は4157件。2000年の7226件からは減っていますがバブル時の1989年の3151件と比べると上回っています(警視庁調べ)。全自動車の事故数に占める割合も、1989年の5.8%から2013年は9.9%と増加しています。ちなみに全国ですと、タクシー事故が占める割合は2.8%(2010年時点)なので、やはり東京のタクシー事故比率は高いといえます。

タクシーの稼ぎは夜間がほとんどなので、東京では多くの運転手が午前中からから翌日の明け方まで働き、1日休むという隔日勤務の形態を取ります。機会があれば深夜に幹線道路の様子を見てください。何台ものタクシーが都心方向に向かって飛ばしています。過酷な勤務で疲れた深夜に、他のタクシーに客を奪われまいと郊外と都心をハイスピードで往復し、無理な割り込みもしばしばある。勤務を終えて帰宅した時にいつも感じたのは、「今日も無事に帰ることができた」という安堵感でした。私はこうした実態を知っているので、自分自身では深夜にタクシーをあまり利用したいとは思いません。

利用者にとって、料金は安いに越したことはないでしょう。しかしそれ以上に重要なのが安全ではないでしょうか。事故をゼロにすることは難しいですが、客の奪い合いを軽減させる減車は事故の減少に必要な最初のステップだと私は考えています。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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