日本株がアメリカ株より優位と言える2つの理由 実は日本の賃金もジワジワ上がっている
日本株は9月20~21日のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)を通過後、アメリカ株の下落に巻き込まれてしまった。日経平均株価は一時2万6000円を割り込んだ。日本株を取り巻く環境は国内要因が比較的良好であるいっぽう、海外、とりわけアメリカが悪い。以下で、論点別に整理していきたい。
ついにアメリカの10年債が一時4%超に
まず、何と言っても重要なのはFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の金融政策だ。現在の状況を整理すると、まず9月FOMCでは大方の予想通り75bp(ベーシスポイント)の利上げが決定され、FF(フェデラルファンド)金利(誘導目標上限値)は3.25%へと引き上げられた。
政策金利見通し、いわゆるドットチャートの中央値は2022年末が4.50%、2023年末が4.75%、2024年末が4.00%、今回新たに示された2025年末は3.00%であり、中立金利は2.5%で不変であった。2022~2023年末の水準は市場参加者の想定よりも25~50bp高く、この点は特にタカ派であった。
また金融市場を驚かせたのは、失業率の見通しであった。3%半ばの現水準から2022年4Qには3.8%、2023~2024年には4.4%へと上昇していく見通しが示された。これは失業率が上昇しても、インフレが沈静化するまで金融引き締めを講じるとの意図が明確に読み取れる。PCE(個人消費支出)デフレータの見通しは2022年がプラス5.4%、2023年がプラス2.8%、2024年がプラス2.3%、2025年がプラス2.0%であった。
ここまでをまとめると、①2022年の追加利上げは11月に75bp、12月に50bpの可能性が濃厚、②2023年も25bpの利上げが一度あり、その後FF金利は2023年末まで据え置きとなる、③この間、失業率は4.4%まで上昇する、④物価は2%を大幅に上回った状態だが緩やかに鈍化していく、⑤経済の正常化が見え、利下げの環境が整うのは2024年となる、といった具合になる。これを受けて金融市場では長期金利が上昇。9月28日には10年金利は一時4%台になった。
「4%のアメリカ金利」はリスク性資産を溶かす温度である。言わずもがなだが、安全資産の国債利回り上昇はリスク性資産である株式の相対的魅力を減じることで株式の下落圧力となる。たとえば、配当利回りとの格差に着目してみると、現在4%に迫る勢いの10年金利は、S&P500種指数の予想配当利回り(1.8%程度)を明確に上回っている。
これが株式を保有・取得する誘因を奪っているのは明らかだろう。2017~208年の金融引き締め局面と比較にならないほどに利回り格差が拡大したことで、インカムゲインを重視する投資家からみれば、株式投資はまったく魅力的でなくなった。またアメリカ株のPER(株価収益率)と連動性を有する実質金利(10年物価連動債利回り)が顕著に上昇していることも株式の打撃となっている。
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