「パート収入の壁」引き下げ、45万人直面の選択肢 保険料は天引きされるが、将来年金額は増加へ

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ただ、そもそもパート労働者のうち7割もの人が社会保険適用の基準となる年収を下回っているという事実は見逃せません。

いまや日本は共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上を占め、かつ、増えているのはフルタイムではなくパートの妻による共働き世帯です。それが意味するのは、長きにわたって給与が上がらず、もはや一馬力で家計を支えることは一般家庭には至難の業だということです。

ならば夫婦でフルタイムに就いたり、社会保険に入っても保険料負担以上の手取りになるまで働けばいいという考えもあるでしょう。しかし、働きながら家事と育児を両立するために夫婦にのしかかる物理的、時間的な制約、子育てをしながら働ける(続けられる)職場に巡り会う幸運を掴む確率は、筆舌に尽くしがたい困難さがあります。

となると、妻は社会保険以前に、まずは少しでも家計の足しにするためにパートでそこそこの収入を稼ぐという選択に落ち着かざるを得ないのかもしれません。これは複数の統計データを見ても、また筆者の周囲の家庭を取材しても、つとに感じるところです。

2年後には再改正、さらに対象者が増加

なお、今回の社会保険適用拡大は従業員数101人以上の企業がおもな対象ですが、2年後の2024年10月には再改正が控えていて、企業規模51人以上にまで広がります。これまでも段階的に対象者が広がってきた経緯から考えると、将来的にはパートやアルバイトで稼ぐには社会保険加入はほぼ必須となり、夫など配偶者の扶養内で自分のパート収入を増やす道はかなり閉ざされていくと考えられます。

共働き世帯にとって、ダブルインカムでいかに世帯の手取り収入を上げていくかは重要な問題です。しかし今後を見据えれば、目先の手取りだけでなく、長期的な目線での世帯収入やキャリア維持も考えておきたいところです。

なにより、社会保険に加入すれば老後の年金は上乗せされます。厚生年金は加入した期間と給与等に応じて年金額が決まります。年収が106万円なら月に厚生年金保険料だけで約8000円の自己負担が生じますが、1年間だけでも加入すれば老後に、年金額は毎年5400円分上乗せされます。また、上乗せは老齢年金を受け取る生涯にわたって続きます

年間5400円なら、たいした金額には思えないかもしれません。でも現役中の厚生年金加入を10年間続ければ、老後の上乗せ額は年間約5万4000円になります。仮に65歳から90歳まで25年間受取り続けたら、上乗せ総額は約135万円になります。もし今、1年でも、10年でも扶養を気にせずに働く可能性がありそうなら、老後の年金を増やすために、少しがんばって働いてみるというのも、有効な戦略になるかもしれません。

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