「パート収入の壁」引き下げ、45万人直面の選択肢 保険料は天引きされるが、将来年金額は増加へ

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特に悩ましいのは、夫が会社員や公務員で、その扶養に入っているパート主婦です(夫婦の働き方は多様ですが、本稿では便宜上、妻が夫の扶養に入ってパートをしているケースで解説します)。

会社員や公務員の配偶者は、配偶者自身の年収が130万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。扶養に入っていると、自身で保険料を負担することなく健康保険に加入でき、老後には国民年金部分の老齢基礎年金を受け取れます。ですから扶養に入りながらパートをする人は稼ぎすぎて扶養から外れることがないよう、「年収130万円の壁」を気にするケースがあります。

家族を被扶養者とする扶養認定手続きは夫などの勤務先が行っており、細かな要件は企業によって異なることがあります。しかしながら今回の改正は夫側の勤務先の要件にかかわらず、法律としてパート先で社会保険に加入することを求めるものです。パート先で加入すれば、夫側の扶養からは外れなければなりません。

パート年収はその年のシフトや繁忙状況によって多少前後することがあるでしょう。しかし扶養内でいるためにおおよそ年収106万~130万円あたりで調整していた人もいるはずです。その人にとっては、働ける上限が130万円から106万円まで下がってしまうことになってしまいます。

扶養内ならかかることのなかった社会保険料が給与から天引きされる、さもなければシフトを減らして年収を106万円未満に下げなければならない……。そんな選択を迫られるのは、金銭的なダメージは言うまでもなく、働きたくても働けないというキャリア面のもどかしさという精神的負荷にもなるような気がします。

しかしパートの人が「働きたくても働けない」のは、社会保険の適用および扶養から外れることだけが元凶ではないのかもしれません。それを示唆する興味深い数字があります。

パート労働者の大半は就業調整をしていない

厚生労働省の「パートタイム労働者総合実態調査(平成28年)」によると、手取り収入への影響などを理由に就業調整をしているパート労働者は男性で5%、女性で19%にすぎません。就業調整をしていない人が男女とも7割近くに上っているのです。そして、それは就業調整が必要なほどの年収や勤務時間に達していないからだという回答が大半なのです。

もちろん、就業調整をしている人の中では社会保険の扶養から外れることや、所得税の負担が増えることへの懸念が多く、稼ぐほど税や社会保険の負担が増える「働き損」を忌避する傾向はあります。その割合は女性が男性の4倍もあり、社会保険や扶養の制度が、働く意欲と能力のある女性に対してある程度の足かせになっていることは否めないでしょう。

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