超大型タンカー(VLCC) の運賃相場がにわかに急騰している。9月21日時点のVLCCのスポット用船料は1日当たり約4万3400ドル(約623万円)と、その前の2日間で2500ドル(約36万円)も上昇。これは9月初め時点の2.5倍を超える水準だ。また、同じ日のバルチック原油タンカー指数 (BDTI)は1501ポイントに達し、直近3カ月で25%上昇した。
「運賃急騰の背景には、石油商社が競ってVLCCをチャーターしていることがある。この動きは、ロシア産原油の輸出に対する西側諸国の制裁が影響している可能性が高い」。ある投資ファンドで交通運輸業界を担当するアナリストは、財新記者の取材に対してそんな見方を示した。
西側の主要7カ国(G7)は9月2日、オンライン開催した財務相会合で、ロシア産の原油や石油製品の輸入価格に上限を設定する措置を12月5日から発動することに合意した。価格上限を超える石油の海上輸送に対して、保険や金融サービスの提供を禁止する。
ロシアはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油輸出国だ。2021年の輸出量537万バレルのうち、約3分の2がタンカーによる海上輸送で運ばれた。それだけに、上述の制裁の影響は大きいと予想される。
中・大型タンカーの輸送力が逼迫
「西側諸国の対ロ制裁の余波で、積載量80~100万バレル級の中・大型タンカーの輸送能力が逼迫した。その玉突きでVLCCの運賃が押し上げられている」。前出のアナリストはそう解説する。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻するまで、ロシア産原油の最大の輸出先は(距離的に近い)ヨーロッパであり、その輸送は主に中・大型タンカーが担っていた。
しかし戦争の長期化とともに、西側諸国はロシアのエネルギー輸出を標的にした制裁を強化。それに対処するため、ロシアは原油の輸出先を(中国やインドなど)アジア太平洋にシフトさせている。その一方、ヨーロッパは(ロシアよりも)遠方の北アメリカ、西アフリカ、中東などからの原油輸入を増やしている状況だ。
要するに、中・大型タンカーの輸送能力逼迫は、ロシアの輸出用途でもヨーロッパの輸入用途でも輸送距離が大幅に延びたために起きた。
そして、中・大型タンカーのスポット用船料が急騰して(輸送力に相対的に余裕がある)VLCCの運賃を上回ったことが、石油商社がVLCCのチャーターに走るきっかけになった。
「原油相場が(3月につけた年初来最高値から)かなり下がったこともあり、世界の備蓄需要は旺盛だ。VLCCの運賃はさらに上昇するだろう」。前出のアナリストはそう予想する。
(財新記者: 李蓉茜)
※原文の配信は9月22日
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